地域に人が訪れる「理由」を作る-日本航空 執行役員 地域事業本部長 本田俊介氏

日本全国に出向するグループ社員を統括
自治体目線で得られる気づきを大切に

 日本航空(JAL)では昨年11月に、それまでの「地域活性化推進部」を「地域事業本部」に組織変更し、地域活性化の取り組みを深化させている。そしてコロナ禍によるピンチをチャンスに変えるきっかけを掴むため、また社員が将来のキャリアをひろげるために、客室乗務員や業務企画職など幅広い職種の社員が地域の自治体等に出向している。社員にとってはこれまでのキャリアとは異なる業種への挑戦となる。

 トラベルビジョンでは来月より、JALの出向者がいま地域とともにどのような仕事をしているのか、出向者と自治体の担当者それぞれに話を聞く新シリーズを開始する。本稿ではそのプロローグとして、JAL執行役員で地域事業本部長を務める本田俊介氏に、出向者への期待や今後の課題について伺った。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

日本航空執行役員 地域事業本部長 本田俊介氏

-はじめに地域事業本部創設の経緯と目的について教えてください。

本田俊介氏(以下敬称略) 航空会社の仕事の第一は、人や物を安全にお運びすることにあります。このことに加えて、我々はコロナ禍において自社の社会的な存在意義を見直すなかで、これからは地域と地域、人と人とを繋ぎ、需要そのものを作るところから取り組むべきではないかと考えました。地域に人が訪れるためには、「そこを訪れる理由」が必要です。今ある需要に頼るだけではなく、人流・物流を含めた需要を新たに創出し、地域への貢献を永続的にするためのよい循環を作り出していく。それが地域事業本部の大きな目的です。

 地域事業本部には客室乗務員の配属者も多く、昨年11月の創設当初は業務企画や地域に実際に移住して地域とともに活動する「JALふるさとアンバサダー」として約20名が配属されています。その後12月には、乗務をしながら地域イベントのサポートや特産品のPRに関わる「JALふるさと応援隊」として約1000名が加わりました。

-メンバーはどのように選出したのでしょうか。

本田 「JALふるさとアンバサダー」や「JALふるさと応援隊」は、約7000名在籍している客室乗務員に対して社内公募を行いました。その結果、実際に移住をする「JALふるさとアンバサダー」として全国に約20名を送り出すこととなりました。また、乗務を続けながら地域との関係を深化していく「JALふるさと応援隊」については、その地域の出身であったり地域に思い入れがある客室乗務員を各都道府県の担当として約20名ずつ、合計約1000名を発令することができました。現在は、客室乗務員はもちろん、業務企画職の社員等も含めて135名が全国各地域の自治体や観光協会などに出向しています。

-出向先の選定方法は。

本田 日頃からお付き合いのある自治体等にJALとしてお役に立てることがないか伺う場合と、地域からご提案をいただく場合の両方があります。

-出向者の方に期待する役割についてお聞かせください。

本田 会社として地域活動を行うと言っても、外からでは見えないものがあります。やはり自治体の方に受け入れていただき、地域の方々と会話や議論を重ねることが必要です。出向している社員には、地域の方との会話で得られる気づきを大切にし、JALとしてその課題に対して何ができるかを紐づけてくれることを期待しています。それが本当の地域活動になるのではないでしょうか。

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