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【現地レポート:イギリス】2021年イギリスの夏を振り返って

  • 2021年9月21日

地方とロンドン、明暗の分かれた国内旅行
王室所有の歴史的建造物を管理するHRPにインタビュー

大盛況の地方と大打撃のロンドン

 自然保護や動物愛護の先進国であるイギリスの国内旅行は、サステイナビリティー重視という近年のトレンドもあり、実はコロナ以前からすでに注目されていました。環境問題に敏感な層は、飛行機や自家用車を避け列車を利用し、現地ではウォーキングやサイクリングと、あえて休暇は海外ではなく地元イギリスの恵まれた自然の中で、海や山の様々なアクティビティを楽しむという層が確実に増えています。

 今年6月にG7サミットの行われたコーンウォールをはじめ、デヴォンやドーセットなど温暖で風光明媚なイングランド南西部は昔から常に人気の旅行先であり、またスコットランド、ウェールズ、湖水地方、ヨークシャーなどは手つかずの自然が残る広大な国立公園にも恵まれ、同じく人気の高い地域です。今年は国内旅行が一部解禁になった4月以来、これらの地域は例年以上の混雑となり、列車や宿泊料金が高騰し予約も取りにくい状況が続きました。

南西部エクセターからトーキーに向かう列車から望むエクス川の眺め。イギリスで最も美しい車窓ルートの1つです。

 なお、イギリス人の国内旅行は圧倒的に自己手配の個人旅行が主流です。宿泊はホテルやB&B以外に、ファームハウス、コテージ(貸別荘)、キャンプサイトなど、Airbnbが流行る以前から自炊や長期滞在できる施設も多くありましたが、最近はさらにペットOKやバリアフリーはもちろん、エコノミーからラグジュアリー、エコロジカルまで様々な形態が充実しています。特にコロナで行き来が不自由だった今年は、3世代の家族や友人グループと大きな家を借りて過ごす、というスタイルも人気です。

デヴォン州ダートムーア国立公園の巨岩ヘイトア。標高457mの荒野からデヴォンの美しい平野と海岸線まで一望できます。

濃いピンクのヘザーが美しいヘイトア近くの池。かつては花崗岩の採石場も今は人知れずひっそりとした荒野のオアシスに。

 元々海外からの旅行者の割合が低く、国内の観光客によるコロナ特需のような地方とは対照的に、国際都市ロンドンは、今年も海外から観光やビジネス客が戻らないため、観光地だけでなく、交通機関から宿泊、小売、飲食など多くのサービス業全般が苦戦しています。しかし旅行会社やロンドン公認ガイドの話によると、国籍に関わらずこの夏海外からの団体はほぼ皆無であったものの、英国内クルーズのオフショア観光はロンドンに来る団体も多数あったこと、また留学生や個人旅行者は多少戻ってきているそうで、少し明るい兆しもでてきました。

 但し、基本的にソーシャルディスタンスやマスク着用、人数制限などの法的規制はなくなったものの、ロンドン交通局では今も各駅、電車やバスの車内ではマスク着用を義務付けています。同様にロンドン市内の博物館や美術館も、無料の常設展、有料の特別展に関わらず、入場はオンラインの事前予約を継続しているところが多く、館内ではマスクが必要です。一方で、それほど入場者の多くない、郊外にあるマナーハウスや庭園などの施設は、予約なしで入れるところも増えてきました。

19年までは年間600万人以上が訪れていた大英博物館、20年は約128万人と4分の1以下に。今もまだ静かです。

この夏はオンラインではなく、リアルのウォーキングツアーが復活。面白くためになる、ロンドン公認日本人ガイドによるウォーキングツアーは在英の日本人に好評です。写真は天文台で有名なグリニッジにあるカティサーク号の前の1コマ。

 ちなみに来年2022年6月はエリザベス女王の即位70周年記念、プラチナ・ジュビリーを記念して6月2日(木)から5日(日)まで特別4連休となり、全国で様々な催しが行われる予定ですので、その頃までには世界の旅行市場の回復を期待しつつ、日本の皆さんもまたぜひロンドンにお越しいただき、美しいカントリーサイドとのんびりした列車の旅も楽しんでいただきたいと願っています。

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