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地域と人で新しい観光を作る-KIBOTCHA 三井紀代子氏、インアウトバウンド仙台・松島 西舘保宗氏

 元自衛隊員で防災体験型宿泊施設KIBOTCHAを運営する貴凛庁の三井紀代子氏と、美容業界出身で民間主導型DMOインアウトバウンド仙台・松島で専務取締役を務める西舘保宗氏。東松島市の観光産業に新たな風を吹き込む2人に、震災から10年を経たこの地で次に目指すところを聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

株式会社インアウトバウンド仙台・松島 専務取締役の西舘保宗氏(左)、貴凛庁株式会社 代表取締役の三井紀代子氏(右)

-はじめに、それぞれの会社とご自身について紹介をお願いいたします。

三井紀代子氏(以下敬称略) 貴凛庁はもともと東京で設立した会社ですが、現在は東松島市に本社を移し、防災体験型宿泊施設KIBOTCHAの運営や地域イベント、地域創生などの事業を行っています。

 父が自衛官だった影響もあり、5年間航空自衛隊にいました。23歳の時に友人と起業し、紆余曲折を経て東日本大震災をきっかけに、自衛隊OGのバックグラウンドを活かして復興事業に携わることになりました。

 そこから5年ほど経ち被災地のインフラも整ってきた頃、今度は自分自身が納得のいく、何かを残す仕事をしたいと思い、KIBOTCHAの運営に乗り出しました。KIBOTCHAとは「希望」「防災」「未来(フューチャー)」を組み合わせた言葉で、震災で津波の被害に遭った小学校を再生し、エンターテイメントと教育と防災教育とを融合させる取り組みを行う施設です。

西舘保宗氏(以下敬称略) 私は10年ほど美容業界にいたのですが、所属していた仙台商工会議所青年部の有志でインバウンド向けに活動していたのがきっかけで、東北6県のインバウンドキーマンを集めた一般社団法人インアウトバウンド連合を立ち上げました。これがご縁となり、宮城県とともに2018年1月に立ち上げたのが「インアウトバウンド仙台・松島」です。宮城県知事の裁断により大規模な母体や大手企業、県職員OBが入らない民間主導型のDMOで、私は専務取締役を務めています。現在もネイルとエステのサロン、飲食店を経営していますが、そちらはスタッフに任せ、DMOの運営に軸足を置いています。

-美容とインバウンドは親和性が高いのでしょうか。

西舘 2016年頃、リクルートさんが「美ンバウンド」という言葉を作り出し、兆しを感じ始めていたのですが、インバウンド市場との価格帯のギャップがネックでした。日本独自の美容スタイルを磨き出せればチャンスはあると思うものの、まだ模索中です。

-外国人観光客にとって、仙台・松島エリアの魅力は何だとお考えですか。

西舘 やはり日本三景の松島ですね。ですが松島は物見遊山的な観光地だけではなく、松島湾という枠でそこに息づく歴史や産業と暮らし、例えば東北鎮護・陸奥国一之宮鹽竈神社や日本酒、米などを主題に、ストーリーとして紡いで商品造成・プロモーションをしていきたいと考えています。

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