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「儲かるビジネス遺伝子を持っている」観光的なモノづくりの実現目指す-鶴田ホテル 経営企画室長 鶴田宏和氏

ウェルビーイング・ビジネスの強化も視野に
ポストコロナは超のつく遊び人に観光のプレーヤーとして参加してほしい

 いまから8年前。東京の音楽業界から別府温泉の宿泊業界に飛び込んだ鶴田宏和氏。老舗「ホテルニューツルタ」を運営する鶴田ホテルの後継者として事業の未来を託された。しかし別府温泉の宿泊業を取り巻く環境は決して楽観的なものではない。ここからどのようにして未来を切り拓いて行こうとしているのか。その胸の内を明かしてもらった。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

鶴田ホテル 経営企画室長 鶴田宏和氏
-ホテルニューツルタの紹介と、鶴田室長の自己紹介をお願いします。

鶴田宏和氏(以下敬称略) ホテルニューツルタは別府市の北浜に立地する全56室の温泉ホテルです。宿泊客数は年間約5万人で、従業員は正規社員が20人程度。コロナ前はパートも30人ほど雇っていました。

 私自身は8年前の2013年に鶴田家に婿入りして別府に移住することになりました。現在は経営修行の最中といったところです。もともとは東京の音楽業界出身で、イベントプロデュースもおこなっていました。個人として湯会という法人を持ち、全国各地の温泉地で音楽フェス「音泉温楽」「湯会」などのイベントプロデュースをする仕事に携わり、現在も別府と東京の2拠点でそれぞれ違うビジネスをおこなっています。

 別府温泉でもイベント企画を手掛けています。15年からナイトタイムアクティビティとして立ち上げのプロデュースに参画した「夜の海地獄」もその一つ。国の名勝にも指定されている温泉庭園「海地獄」を借り切って開催する夜のイベントで、ライトアップに湯けむりが揺れる中を足湯なども楽しみながら園内巡りする趣向で、18年、19年はかなり人気を博したイベントになりました。

 昨年はコロナ禍で「海地獄」が開催できず、逆にその時にしかチャレンジ出来ない新たな企画として、SNSを可能な限り使わない招待制で100名限定のナイトタイム・ガーデンパーティー「The Hell」を開催。別府の優れた若手飲食店オーナーたちの料理をケータリングし、DJも入れた、アフターコロナのインバウンド再来を見据えたクローズドの社交的イベントに仕立てました。

海地獄ナイトタイムガーデンパーティー「The HELL」の様子

 今回のイベントは県のナイトタイムアクティビティ育成のための補助金事業として実現したものでしたが、補助金がなくても採算が取れる手応えがあります。別府市には海地獄のようなユニークベニューが他にもあるので活かしていきたいですね。

-別府の観光産業の現状について、どのように見ていますか。

鶴田 これまでずっと慣性のまま止まることなく流れてきたのが別府温泉でした。本当に衰退した温泉地はクラッシュし止まってしまった。それに対して別府温泉には必ず人が来てくれていたし、クラッシュせず止まりもしなかった。その間多くの地場宿の施設は老朽化し経営体力を削りながらビジネスを維持し続けてきた側面も否めません。別府温泉地自体のブランドは生き残っていますが、私が別府に来てからの8年の間、宿泊施設の多くで人と資本が入れ替わり地場のオーナーの方々が次々に去っていきました。

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