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観光は次世代の重要産業、サウジアラビアで進む巨大プロジェクトの全貌
ザ・レッド・シー・ディベロップメント・カンパニーCEOのジョン・パガーノ氏

巨大リゾート開発プロジェクト「コーラル・ブルーム」とは?
リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)で自然を保護し次世代に残す

—サウジアラビアは、世界的にもあまり知られていない観光デスティネーションです。「コーラル・ブルーム」が進められている場所はどのようなところでしょうか。
島々の75%は手を加えられることなく、そのままに残される計画で9つの島が特別保護区に指定される

パガーノ サウジアラビアというと砂漠のイメージが強いですが、紅海沿岸は多様な自然と景観に恵まれています。美しいサンゴ礁が広がる海洋環境だけでなく、渓谷、山々にも囲まれ、火山もあります。夏でも平均気温は30度前後で湿度も低く、40度以上を記録することもある首都のリヤドやドバイなどと比較すると、過ごしやすい土地です。

 また、文化や歴史遺産も多様で、一度の訪問でさまざまな体験ができることも特徴でしょう。日本や西欧諸国とは異なるカルチャーを経験できると思います。

—「コーラル・ブルーム」では「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」というコンセプトを掲げています。あまり馴染みのない言葉ですが、どういう意味ですか。
生物多様性へ配慮し、島のマングローブなどを破壊しないように設計されている

パガーノ 「リジェネラティブ・ツーリズム」のコンセプトは、生物多様性に配慮し、野生生物や環境を保護するだけでなく、次世代のために強化することを目的としています。TRSDCのマスタープランでは、マングローブ、海草、サンゴ、陸地の植生など、生物学的に多様な生息地を強化することで、30%の純保全効果が得られると予測しています。

 現在地球で起こっている温暖化や気候変動を考える時、私たちは自然の一部であることを改めて考え直すときに来ていると思います。自然環境は貴重な資産です。もはや、このメッセージを伝える上でサステナビリティという言葉だけでは十分ではないと思っています。次の世代に何かを残すために、自然を守ることを考えなければなりません。

 科学者たちは現在、感染症の約85%が動物由来であると主張するようになっています。その理由の一つは、動物との直接的な接触から私たちを守ってくれていた自然という緩衝帯が音速で消滅していることです。熱帯雨林や世界中の湿地帯の85%が消滅しています。私たちはこの傾向を逆転させなければなりません。

 そのうえで、TRSDCは、これまでのアプローチとは異なるリゾート開発を進めています。自然と共存できるように、ホテルを分散して配置し、ゲストに必要なスペースとプライバシーを提供すると同時に、周囲の環境に浸ることができます。「コーラル・ブルーム」という名称は、我々の自然に対する取り組みを象徴しており、特に紅海に繁栄するサンゴを保護し、保全し、向上させるという約束を意味します。

 また、ここは世界最大級の再生型観光地となります。TRSDCは100%再生可能エネルギーを使用し、世界最大級の蓄電システムも備える計画です。二酸化炭素排出についても、何らかとのオフセット取引ではなく、クリーンエネルギーへの取り組みを通じて、物理的に年間約50万トンの削減を目指す考えです。

—プロジェクトによる地域経済への貢献についてお聞かせください。

パガーノ このプロジェクトでは、約3万5000人の直接雇用、約3万5000人の間接雇用が創出されると見込んでいます。すべて完成すれば、年間約60億ドルものGDPを生み出すと期待されています。

 また、サウジアラビアは非常に若い国です。次世代のホスピタリテイ産業の専門家を育成するために、奨学金制度も立ち上げ、地元の大学や世界的なホスピタリティ学校とも連携していきます。サウジアラビアの雇用を創出するだけでなく、国際的な人材を迎えることで、サウジアラビアの若い世代のスキルも向上すると期待しています。

 「コーラル・ブルーム」は、プロジェクトに関わる人たちにとって一生に一度あるかないかの仕事になるでしょう。彼らのパッションは非常に熱い。TRSDCとしては、ソーシャルコミットメントを約束していますので、環境でも経済でも地域コミュニティーとの関係を大切にしています。