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発信力を磨いて「頼られるDMO」に、三重県観光連盟 事務局次長 川口政樹氏

-連盟の活動内容についてお聞かせください

川口 ウェブサイトとSNSというデジタルメディアと季刊紙等の紙媒体で観光情報を発信しています。今後はメディアとしての発信力を更に高め、地域の事業者がプロモーションをしようと思ったときに出稿先メディアに選ばれるような存在にしていきたいと考えています。

 例えば旅行雑誌や旅行サイトを活用したプロモーションは訴求力も高いですが、その分高額ですし、地域外にお金が流出することになります。連盟がプロモーションの受け皿となれば費用を抑えた提案ができますし、連盟は非営利組織ですので、プロモーションの受託収益を三重県の観光PRに使うことができるんですね。そうなれば、地域内でお金を有効に活用することができます。

 そのためにも連盟ではサイトのコンテンツを充実させ、SNSのフォロワー数を増やし、より多くの方にサイトを見てもらうことに力を注いできました。ページビュー数やフォロワー数などの数字がすべてではありませんが、メディアとしての存在感を発揮していくためには分かり易い指標なので、数字にはこだわっていますね。その結果、2019年の都道府県公式観光情報サイト閲覧者数ランキングのスマートフォン部門で全国1位、SNSの総フォロワー数も2020年12月時点で47都道府県の観光振興団体のなかで1位になっています。

 情報発信の主たるターゲットは三重県に何らかの興味を持ってくれている層です。サイトではSEO対策も強化しており、検索流入が約8割を占めています。SNSはサイトを訪れる方よりも手前の層を意識して使い分けていますが、やはりフォロワーに対しての発信が中心になるので、まだ興味を持っていない方々にどうリーチしていくか、三重の魅力の認知をどう高めていくかが課題ですね。ですので、予算がある際はウェブ広告やSNS広告で新規ユーザーへアプローチする施策を行うようにしています。

-まだ三重県に興味のない方に薦めるとしたら何でしょうか

川口 やはりお伊勢さんですね。「日本人の心のふるさと」とも言われている場所が三重県にあるのは大きな強みです。とはいえ、伊勢神宮は認知度も人気も高い場所ですので、そこから他のエリアに足を延ばしてもらえるよう魅力を発信するのが私たちの役割です。季節としては冬から春にかけてがお薦めですね。世界に誇れる梅の絶景スポットがありますので、さまざまな観光地と組み合わせて訪れてほしいと思います。

-コロナは地域の観光産業や経済にどのような影響を与え、今後その影響はどのように拡大するとお考えでしょうか

川口 昨年4月、5月は需要が完全になくなりましたが、Go Toトラベルの開始でかつてないような忙しさになりました。12月からは再び厳しい状況となり、特に1月以降は前年の1割程度となっているという声も聞きます。このような激しい浮き沈みがあると観光事業自体が成り立たなくなるのではないかと懸念しています。

 一方、コロナは状況を早めただけではないかという考えもあります。団体旅行をターゲットとし、宿泊施設だけで完結するような旅行スタイルが減っていくことは間違いないでしょうし、今後もコロナと同様のリスクがあることを考えると、人を多く呼びさえすれば良いという時代は終わりつつあるように思います。個人のお客様一人一人に地域全体の魅力を感じて楽しんでもらうことで付加価値を上げていくというモデルに変えていくべきでしょう。DMOが観光事業者とともに地域における体験価値をいかに高めていくか、そしてその魅力をいかに発信していくかが大きな課題になってくると感じています。