旅行会社と宿泊施設でWin-Winの関係を-JATA経営フォーラム

  • 2016年4月14日

仕入れから販売までのあり方を見直し
宿泊施設と消費者から選ばれる旅行会社に

手数料の安さはOTAに軍配
店舗販売はリピーターが高評価

春茂登旅館の根本芳彦氏  分科会では旅行会社での販売のうち、リアルエージェントとOTAの比率も紹介した。滝の湯ホテルはリアルエージェントが78%、OTAが22%。山口氏は「これでもOTAは多くなった。今後、伸びたとしても25%くらいが限界」との見方を示し、「これからはリアルエージェントでの対面販売が伸びると思う。多少(OTAより多く)手数料を払っても、対面販売のお客様を大事にしたい」とリアルエージェントへの期待を示した。

 日光千姫物語はリアルエージェントが75%、OTAが25%。根本氏によると、リアルエージェントによる送客のうち50%をリピーターが占めているという。同氏は「リピーターは今後も必ず来てくれるので、しっかり取り込んでいきたい」とリアルエージェントの必要性を強調。あわせて、稼働率を限りなく100%に近づけるため「OTAでの売れ残り分をもっと自社で販売したい」との考えを示した。

 ホテルおかだはリアルエージェントが70%、OTAが30%。原氏は「リアルエージェントは人を介している分、リピーターになりやすい点が強み。(手数料の安さを取って)OTAでの販売をさらに増やすとなると、パンフレットで売る商品がなくなってしまう」との見方を示し、「これくらいのバランスでいい」と語った。「販売全体のバランスを上手く取って最大の売り上げを得る方が、手数料を下げることより大事」という。


旅行会社による稼働率低下が問題に
宿泊施設にやさしい返室ルール作りを

ホテルおかだの原洋平氏 後半は3軒の現状を踏まえた上で、今後のリアルエージェントとの関係について意見交換を実施。なかでもデリケートな話題である客室の在庫に関しては、各施設がリアルエージェントに対する本音を語った。

 旅行会社に提供する在庫の考え方について、原氏は「自社販売ができないと自社とマーケットの関係が希薄になってしまうので、これまで旅行会社への提供は減らしてきた」と説明。また、旅行会社での売れ残りによる稼働率の低下について指摘し、「旅行会社と宿泊施設が(増室や返室について)互いに意見を言いあえるよう、旅行会社にはある程度の在庫を提供し、各社がまんべんなく販売できる状態にしておくことがベスト」との考えを示した。

 根本氏は「旅行会社は商品に使用する在庫の保障がなければパンフレットなどに掲載できないので、在庫を提供することはやむを得ない」としつつも、「本当は旅行会社の共通在庫となるのが望ましい」と語った。一方で、「旅行会社が旅館を選ぶように、旅館も旅行会社を選ぶ時代が来ている」とし、売れ行きによって提供在庫数を増減させる可能性を示唆。「できれば買い取りがありがたい」と話した。

 山口氏は「お金の流れが発生して初めて仕入れといえる」と語り、「部屋を提供する際に何らかの料金が発生するような仕組みができれば提供しやすい」と述べた。そのほか、在庫の提供に関連する問題として返室についても言及し、「1週間前や2週間前に返室されても、そこから自社で販売するのは難しい」と語った。これにはほかの登壇者も同意し、根本氏は、「返室に関する一定のルール作りが必要。1部屋しかない部屋や特別な部屋は共通在庫にすればいい」と意見を述べた。