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地域に眠る素材で国内観光の再活性化を-ツーリズムEXPO

  • 2015年12月15日

地域ごとの連携で国内観光を促進
企画力で魅力を引き出し、コンテンツを発信

地域ならではの魅力と新素材の組み合わせを
地方から「新しい観光の形」を発信

ベネッセホールディングス最高顧問の福武總一郎氏  その後のプレゼンテーションでは、登壇者たちが日本国内の観光需要活性化のための取り組みについて意見を述べた。福武財団の理事長でベネッセホールディングス最高顧問を務める福武總一郎氏は、1985年から始めた取り組み「ベネッセアートサイト直島」を紹介。同事業は、過疎化が進む瀬戸内海の島々に現代アートを持ち込み、地域住民や自治体とともに地方の活性化をめざすもの。福武氏は企業が経済活動を通じて地域振興をはかる取り組みを広げたい考えを示した。

 香川県に属する直島の人口は3135人で、65歳以上の高齢者の割合は34%。面積はわずか8.13平方キロメートルの小さな島で始めた「ベネッセアートサイト直島」は、現在では直島諸島の1つである豊島や、岡山県の犬島でも展開しており、10年からは3年に1度「瀬戸内国際芸術祭」を開催。13年の芸術祭には国内外から延べ107万368人が訪れ、132億円の経済効果を産んだ。こうした取り組みが評価され、同事業は今年のツーリズムEXPOジャパン2015で実施された「第1回ジャパン・ツーリズム・アワード」で大賞を受賞した。

JR東日本会長の清野智氏  東日本旅客鉄道(JR東日本)取締役会長の清野智氏は、国内観光の活性化には、都市部から地方に行き、地方からも都市部に来るなど「相互流動が最も重要」との考えを示した。同氏は今年3月に運行を開始した北陸新幹線に言及し、今年のゴールデンウィークの輸送実績では上越妙高駅から糸魚川駅間が在来線特急との前年比で211%増を記録したことを説明。富山方面から長野方面への訪問も増えた旨を語った。また、来年3月に開業する北海道新幹線についても述べ、北海道だけでなく青森県も合わせて巡るなど、沿線地域での双方向流動を意識した広域観光ルートの形成に取り組む必要性を強調した。

 三重県知事の鈴木英敬氏は地方創生に必要なポイントとして、観光を産業として成り立たせるためにはマーケティングや研究、商品造成および販路の開拓、規制緩和などの施策を実施する必要があると話した。次に入込客数の増加だけでなく、観光の質の向上と消費額の増加も重要であると指摘し、そのためには各企業と「平等」に付き合うのではなく、同県など特定の地域と戦略的に連携してくれる企業と協力して政策を進めていく考えを示した。

 さらに、13年の伊勢神宮の式年遷宮による観光客の増加を一過性のものにしないため、13年から15年にかけて観光キャンペーン「実はそれ、ぜんぶ三重なんです!」を実施していることについても説明。キャンペーンでは観光地や飲食店、宿泊施設などで割引サービスを受けられる「みえ旅パスポート」を51万部発行したほか、伊賀エリアの「忍者」と伊勢志摩エリアの「海女」という、三重県に縁のあるテーマで地域の魅力をアピール。国内外で人気の高い素材をテーマに据え、三重県のブランディングを実施している旨を語った。