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楽天、今年も訪日強化、年間1億人時代見据え-多言語化も推進

  • 2015年2月16日

楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏。この日は講演のほか、当初の予定にはなかったホテル関係者とのトークセッションも実施した 楽天は2月16日、首都圏などの宿泊施設を対象に「楽天トラベル新春カンファレンス2015」を開催し、同社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が、今後のトラベル事業のビジョンについて講演をおこなった。三木谷氏は同社でも注力する訪日外国人旅行者の取り込みについて、「政府の目標では2020年までに年間2000万人、2030年には3000万人とされているが、さまざまな議論のなかでは『保守的ではないか』という意見もある」と説明。個人的な意見として「将来的には1億人」も可能との見方を示し、「安倍内閣にも提案している」と伝えた。

 今後のグローバル化戦略については、今後の世界の総GDPにおける日本の割合が人口減などにより減少していくことを見据え、「日本の1億人強とだけでなく商売をするのではなく、世界の70億人と商売した方がいい」と強調。「総合的なトラベルサービスを世界で展開したい」と意欲を示した。同社の2014年における訪日旅行の予約流通総額は、前年比63.3%増に伸長している。

楽天執行役員トラベル事業長の山本考伸氏 続く戦略共有会では、同社執行役員トラベル事業長の山本考伸氏が、楽天トラベルの昨年の取り組みについて説明。平日のレジャー需要の掘り起こしや子ども料金設定の徹底、「楽天スーパーSALE」の実施による需要喚起、ウェブサイトの多言語化や地域との連携による訪日外国人旅行者の取り込みなどに取り組んだことを説明した。

 このうち訪日外国人旅行者の取り込みについては、昨年夏の時点では英語版しかなかった外国語サイトを多言語化し、現在は中国語繁体字・簡体字、韓国語、タイ語、インドネシア語、フランス語の7言語にまで増やしたことを報告。「現在の訪日外国人の約82.5%に対応できている」との見方を示した。対応言語は今後も随時増やす方針。同社の2014年通年の金額ベースの宿泊取扱実績によれば、シェアの上位は香港17.2%、台湾17.1%、タイ15.2%、シンガポール9.6%、アメリカ9.2%となっている。

 あわせて今年は、同社のITC(インターネット・トラベル・コンサルタント)のコンサルティング能力の向上に向け、人材育成を強化する。これまで実施してきた人材強化策に加えて、今後は同社の有するビッグデータを活用した人材育成を進める考えで、競合相手やターゲットの特定、見込客の推定などに関して、提携宿泊施設を支えるITCの能力を強化していく。

 山本氏はそのほか、新たな試みとして今年の8月1日から5日まで、東京ビッグサイトで楽天グループによるイベント「楽フェス」を開催することを明らかにした。「Shopping and Travel is Entertainment」をテーマに、ユーザーがさまざまな体験をできるイベントとする予定で、楽天市場の加盟店舗や宿泊施設には、多くのユーザーにプロモーション活動をおこなえる場を提供する。詳細については後日発表する予定。

 その他には、同社執行役員トラベルサービス開発・運用部部長の星野俊介氏が、ユーザーインターフェースの改善状況について説明した。同社では、2014年にはヘッダーおよびフッター表示の改善、掲載するホテル情報の追加、口コミ情報の表示開始などをおこなったが、今後はホテルの価格表示のブラッシュアップや、他ユーザーによる閲覧・予約状況の表示などもおこなう方針。管理画面についてもパソコン版・スマートフォン版ともに操作性や機能の向上などを進めるという。

 訪日外国人旅行者への対応については、昨年は全言語でデザインを共通化したほか、モバイル端末での見やすさを優先した「モバイルファーストデザイン」の導入を推進したことを説明。サイトの多言語化については、今後は夏までにスペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ドイツ語、ベトナム語を追加して12言語にまで拡大する。星野氏はこれら12言語で、ほとんどの訪日外国人旅行者への対応が可能になるとの見通しを示した。