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激動の時代を乗り切る経営者とは-トラベル懇話会新春講演会

  • 2015年2月10日

予測できない将来を乗り切り
50年後に感謝されるために

今後のトラブル増加は確実
チャンスは新興国へ

 私が航空会社に勤めていた1980年代には、「10年に1度は、業界を1割か2割縮小させるトラブルが起こる」と考えられていた。実際に1980年には第1次イラン・イラク戦争が勃発し、年に4回や5回もハイジャックが続いたこともあった。しかしその「10年に1度」のサイクルは、徐々に短くなってきている。90年代には湾岸戦争やアジア経済危機があり、その後も米国同時多発テロ、SARSの拡大、リーマン・ショック、福島での原発事故、最近ではエボラ出血熱の流行などがあった。かつての航空業界では、「国を超えた合併統合などありえない」と言われていたが、今では合併統合やアライアンスなどが不可避となっている。

 これらのトラブルは、たまたまこの20年から30年だけ多かったわけではない。今後も数十年にわたり、思ってもいなかったことが、思ってもいなかった頻度で続くことは間違いない。勿論、「具体的にいつ何が起こるのか」ということは予測できない。しかしその根本となっている原因や、その原因が今後も数十年にわたって続きそうなことだけは分かる。旅行会社も、これから起こる大きな変化に備えていかないと、訪日旅行の急増や国内旅行の成長など、現在ある大きなチャンスを活かせない。

 そして、これからは新興国の時代が続く。リスクもチャンスも新興国に存在している。そのことを若い人々に理解してもらうためには、まずは経営者自らが新興国に行き、新興国の動きを肌感覚で学ぶことが大事だ。これからは、若いうちにニューヨークやロンドンなどではなく、上海やジャカルタ、ムンバイなどを経験する必要があると言えるだろう。

 ただし、肌感覚の知識を持つだけではだめで、学んだことは利器として使わなくてはいけない。まずは新興国と一緒にビジネスをできる、交渉力のある人間を育てなくてはいけない。そしてデジタル技術や金融を良く理解して、ビジネスに活用しなくてはいけない。20世紀型のマーケティングも大事だが、文明の利器を使える人材の育成が急務といえる。

 たとえば、現在ではコミュニティFMのラジオ番組をインターネットで世界中に発信できるように、ローカルなコンテンツでも、やり方次第で簡単に世界に届けることができる。これは政府が進める地域創生などにもあてはまる話だと思う。