地域との協力で質を向上、インバウンドの取り組み増を、JATA経営フォーラム

  • 2012年3月22日

まずは重要性の周知を
官民一体となって推し進め

観光庁国際交流推進課長の亀山秀一氏

 これまでの成功例で分かることだが、インバウンドはKNTの稲田氏がいうように「旅行会社だけではなにもできない」。宿泊施設や観光素材の魅力はもちろん、周辺地域、自治体などの協力は必須である。

 国の対応はどうだろうか。政府でもインバウンド振興を目的とした予算がついているが、「ひとつの自治体をプロモーションすることはできない」と亀山氏はいう。だが、「自治体が見どころなどを具体的にアピールしてくれればビジネスにつながりやすい」とも話し、中国からビジネスの要望があることも明かす。自治体の自主的かつ積極的な働きかけがあれば、政府はそのコネクションの役割を果たすことが可能となる。

 東京都の横山氏は「行政でできることにも限界がある」としつつも民間との協力には理解を示す。「各地の観光協会がアピールする見どころの数々が、実は顧客側から見ればそれほど魅力的に映らない場合がある。普段から旅行者と接する機会の多い旅行業者にぜひアドバイスをしていただきたい」と話した。

東京都産業労働局観光部長の横山英樹氏

 国、自治体ともにインバウンドに高い期待を持ちながら試行錯誤している状態がうかがえる。しかし具体策が見えてこないのは一般に「インバウンドの必要性があまり理解されていないため」であるようだ。政府内の周知もさることながら、まずは世間に対するインバウンドの必要性のアピールが先決で、観光庁もそこから着手している。

 これは旅行業でも同じで、深川氏によるとJATA会員のうち、インバウンドに携わっているのはわずか1%に過ぎない。稲田氏によればKNTでもインバウンドによる収益は全体の2.5%といい、「もっと携わる人を増やすべきだ」という。

 震災後は大きな打撃を受けたが、今年の春節にはアジア圏からの買物客で秋葉原が賑わったといわれている。しかし「その利益は我々の懐に入ってきていない。これをどうにかしなければならない」と深川氏。インバウンドはこの先取り組むべき第1の項目である。




取材:岩佐史絵