地域との協力で質を向上、インバウンドの取り組み増を、JATA経営フォーラム

  • 2012年3月22日

いかに取扱を広げていくか
ファンづくりではずみを

KNT訪日旅行部長の稲田正彦氏

 インバウンドの約7割が訪れる東京都。スカイツリーのオープン、東京国体の開催など大規模なイベントが目白押しの今年と来年は、チャンスを迎える。海外からも注目度が高いとみられ、深川氏も「スカイツリーは最大の目玉になる」という。ただし「どのように売るのか」と疑問も呈する。スカイツリーを用いて体験型の企画や高額商品の造成はできるのか、確かにその“売り方”は旅行会社を悩ませるところだ。

 これには旅行会社自らのスタンスを変えていく努力が必要だ。KNTの稲田氏は「旅行会社は現状、オペレーターの役割だけを担っているが、ここから脱却すること、新しいビジネスモデルを考えることが重要」と説く。インバウンドの拡大には、旅行業者がどのようなサービスを提供すべきかを考え、自らプロデューサーとして素材をより魅力的に仕立てあげていくことが重要だ。

 そこで稲田氏は、ライツ事業の可能性を示唆する。2010年にKNTが造成した『名探偵コナン』を起用したツアーは2百数十名を集めることができたといい、こうした権利付き商品の可能性を高く評価している。東京マラソンのようなスポーツもライツ商品といえ、現地のスポーツ用品会社とともにプロモーションをかけていける。料金的な問題もあるものの、ライツ商品は注目度も高く期待できそうだ。

ホテルオークラ取締役常務執行役員の後藤建二氏

 また、KNTでは10年前から台湾で民間レベルのイベントを開催しており、昨年12月に開催したイベントでは東北などの自治体も含め38団体が参加。「日本の元気を伝える」活動をし、これが例年にない盛況で多くの来場者を得た。その際に台湾の方々に描いてもらった「がんばれニッポン」の旗を今後の商品造成にも利用する考えで、「誘客のヒントはどこにでもあると感じた」という。

 横山氏は東京都の文化交流事業に光明を見出す。訪日教育旅行の学生と地元学生との交流事業で、たった半日で双方の学生は気軽に仲良くなる。文化の相互理解を深め、彼らは東京の“ファン”になり、将来的な渡航者数の増加につながると見ている。また、後藤氏は新潟での勤務時代にアメリカから学生オーケストラが滞在したときのことを振り返る。地元学生との文化交流との要望に地元自治体に相談したところ、英語の討論会や伝統舞踊の披露など実にバラエティに富んだ交流が可能となった。

 深川氏は“ファンづくり”には地域一体となってじっくり取り組まなければならないとして、老舗旅館の加賀屋の例を出して説明。同旅館は海外からの宿泊客のほとんどが台湾人で、台湾人でももはや“あこがれ”の場所である。これはJTBはじめ周辺の協力もあり何年もかけてつくりあげたイメージであって、一朝一夕にできたものではないと話す。