「観光が新しい日本を作る」-観光業界のミッションと求められる人材

  • 2012年2月15日

日本を作る観光業界
今後、求められる人材とは

コーディネーターを務めた横浜商科大学准教授の宍戸学氏 最後に、今後求められる人材像のテーマでは、帝京大学の戸枝氏から、各業界の代表に対して、業界への志望動機と業務を通じて実感した観光の魅力について、質問が投げかけられた。

 JR東の原口氏はこれに対し、「もともと“鉄ちゃん”だった。友人に言わせると、お前ほど幸せな人はいないといわれる(笑)」と動機を説明。これまでの経験を振り返りながら「人と人との触れ合いが嫌いな人には向かないが、これが好きな人にはたまらない業界だ。そういう人はぜひ、飛び込んでほしい」と語った。また、JTBの野口氏の動機のキーワードは「自己実現とお客様との感動の共有」の2点。「自分自身でツアーを企画し、そのツアーにお客様をお誘いするので、結果として自分の行きたいところにお連れし、満足していただくことになる。自分の好きなところについて感動を分け合えるのが醍醐味」と、旅行の仕事の楽しさを語った。

 立教大学の柳澤氏からは、ツーリズム業界で活躍している人の人物像を問われ、帝国ホテルの山中氏は「素直さ。適用力」と断言。「仕事をしているといろんなことにぶつかるが、どんな出会いも受け止めて吸収していく人。例えば、指示に対していったん自分の希望は置いて従い、そこで伸びる人は多い」という。もうひとつ上げたのが粘り強さ。「10年間、同じ仕事をしているとマンネリすることがあるが、同じではないといえる工夫ができることも大切」とも語る。

 JLの藤田氏は必要な資質として「語学力と体力」をあげた。語学力といっても、TOEICの点数ではなく人の中にどれくらい入り込めるかというコミュニケーション力のことで、「それができれば知力が増える」という。また、体力も「心の体力」のことで「1、2回の失敗でへこたれない。3、4回目の後に成功がある」と、社会の厳しさを伝えるとともに激励を送った。

 最後に宍戸氏は、「震災は不幸な出来事だったが、震災復興のなかで知恵を出し合いながら大きな変化を遂げていることに世界中が注目している」と述べ、その上で「日本の魅力はいろいろあり、観光が新しい世の中を作る。だからこそ、この業界で働く人は単に観光業だけではなく、どういう日本を作り、発信していくか考えるべき」と、今後の観光業の担う役割を語った。さらに、グローバル化の時代において、「世界を見ることは非常に大切だが、そのためにも日本を知らなくては世界に勝てない。日本にしっかり目を向けて、国内の資源や文化、社会や地域のつながりを大切にすることが、結果的に強い日本を作っていくことにつながる」と、締めくくった。