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「観光が新しい日本を作る」-観光業界のミッションと求められる人材

  • 2012年2月15日

浮かび上がった日本の強さ
震災の影響と今後の展望

左から):JTB常務取締役の野口氏、JR東・常務取締役の原口氏、JL執行役員の藤田氏、帝国ホテル人材育成部長の山中氏 「2011年の振り返り」と「今後の展望」のテーマでは、2011年に発生した東日本大震災とその後の回復への取り組みが話され、観光業界のミッションが示唆された。

 震災発生後、各業界は大きなダメージを受けた。例えば、東日本旅客鉄道(JR東)は、300キロ以上もの線路が壊れ、今も復旧のめどが立っていない個所がある。帝国ホテルでも「キャンセルの嵐」(山中氏)。4月の稼働率は過去最低の34.4%に落ち込んだ。特に訪日外国人客が激減し、日本航空(JL)は4月の利用者数は半減。JTBも外国人旅行は対前年の20%くらいまで落ち込んだ。

 この状況の中でJLでは「東北にフライトを」を合言葉にまとまり、合計2700便の臨時便を運航。JR東では方々の協力を得て1日8500人の人海戦術で、新幹線復旧に取り組んだ。今後、デスティネーションキャンペーンで中期的に東北への送客を強化することも決めている。帝国ホテルでは震災当日、帰宅困難者2000人を受け入れ、食事や備蓄していた水を提供。JTBでは「従来、タブー視されていた」(野口氏)ボランティアツアーを設定した。「商品とする罪悪感があったが、被災地支援を考えたとき、我々の仕事と捉えた」という。被災地の支援センターと協力しながら1人でも参加可能なツアーを出したところ、「想像以上の支持を得た。大きな支援となった」と話し、「変化に対応してサービスを提供することが旅行業の大きな意義だ」と強調する。

左から)帝京大学の戸枝氏、東海大学の岡山氏、立教大学の柳澤氏 今後の展望としては、JLの藤田氏が日系LCCの就航に言及。「国内移動の選択肢が増えて利便性が向上し、市場が活性化されるのは良いいこと。競争相手が増える懸念はあるが、新しい需要を創造する力は大切」と述べ、「観光業界がLCCを使ってどう需要を作るかが求められる」と語った。

 これに対し、立教大学の柳澤氏が「LCC同士の競争も出てくると思う。今後、価格以外ではどういう競争が行なわれるか」と質問。JL藤田氏は1975年のLCC誕生以降、衰退したLCCもあれば生き残ったLCCもあるとした上で「価格のみの競争ではだめだ。生き残ったのは、コーポレートアイデンティティがはっきりしている特徴のあるLCC」と紹介。「利用客にどう楽しんでもらうか、社員一人一人が情熱を持って取り組んでいくことが大切。これはLCCだけではなく、すべてに言えること」と応えた。