11年訪日客数622万人、JNTO推計値-松山理事長、10年以上の回復めざす

  • 2012年1月22日

JNTO理事長の松山良一氏  日本政府観光局(JNTO)は2011年の訪日外客数(推計値)を、前年比27.8%減の621万9300人と発表した(※注)。1971年の大阪万博の反動による22.7%減を上回り、年間では過去最大の下げ幅となった。ただし、12月単月では11.7%減の57万2300人と、震災以降の縮小幅では最も小さい。JNTO理事長の松山良一氏は「総じてビジネス客は回復。レジャーは北海道と沖縄、九州は対前年まで戻った。予想を上回るスピードで回復している」と評価。その要因を放射能に対する懸念の低下のほか、日本の安心・安全のアピール、旅行会社やメディア招聘、旅行商談会への参加など、「積極的な活動の成果」と強調した。

 今年の展望として松山氏は、放射能や円高など懸念材料は残っているとしながらも、「世界の旅行者数が初の10億人超となり、特に中東とアジアの伸びが有望」という世界観光機関(UNWTO)の予想を提示。明るい材料として(1)(日本が)伸びが予想されるアジアにあること、(2)日中国交正常化40周年等などの周年事業が多いこと、(3)世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)やなど、大規模の国際会議の日本開催、(4)航空自由化とLCC元年、(5)クルーズ船寄港増加、の5つをあげ、「一刻も早く、震災前の水準に戻したい。今年は過去最高を記録した2010年の861万1175人を超える数値を目標に策を練っている」と意欲を示した。

 今年のJTNOの活動方針としては、(1)日本ブランドの発信、(2)選択と集中のプロモーション、(3)外客受け入れ態勢の充実、の3点に力を入れる。日本ブランドの発信については、「日本は工業国としてのブランドが確立しているが、観光文化やクールジャパンなどソフトもいいものがある」とし、ソフト面の魅力を加味した新ブランドを打ち出し、売り込んでいく。夏から秋には実現したい考えだ。

 選択と集中のプロモーションは、予算の制限がある中で「富裕層と中間層の取り込み」「MICE」「教育旅行」の3つにターゲットを絞り、質的向上をねらう。消費額が高いオピニオンリーダーと、次世代を担う青年を取り込むことで、相互理解の効果があると期待を寄せる。受け入れ態勢の充実については、1月2日に移転・オープンした「TIC」に対する期待とともに、JNTO認定の「VJ案内所」の質的向上をはかる。また、Wifi環境整備やウェブの多言語情報、スマートフォンを使った旅行案内の充実にも取り組む。


▽中国の伸び期待、変わらず

 市場別では、特に言及が多かったのが中国。中国人の海外旅行者数は、香港とマカオを入れると7000万人、それ以外でも2000万人(速報)で、「強力に取り組む必要がある」との認識だ。富裕層を中心に放射能への懸念と円高の影響があるものの、昨年のビザの緩和や今年の周年イベントにより、特に教育旅行とインセンティブの復活に期待を寄せる。

 旅行ピークの春節については「LCCの就航や予約状況を鑑み、今年は好調」と予想。指摘される中国経済の成長鈍化についても「マクロ経済としては多少の落ち込みを覚悟する状況にあるが、昨年の中国人海外旅行者数は20%増。落ち込みがあっても、7000万人で考えれば誤差のうち」との考えで、今後も従来と同様に、中国への取り組みを強化する考えを強調した。


※注
JNTOの訪日外客数は、法務省集計値を元にJNTOが算出した数値のため、法務省発表の外国人入国者数とは異なる。日本を主たる居住国とする外国人永住者などを省き、一時上陸客などを加えた。駐在員やその家族、留学生などの入国者・再入国者数も含む