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グローバル人材を育てるオーストラリアの教育旅行-日豪ツーリズム学会

  • 2011年11月8日

学生を呼び込むためには楽しい観光へ原点回帰を

松蔭大学観光文化学部教授の恩地宏氏  研究発表ではまず、松蔭大学観光文化学部教授の恩地宏氏が「日本の若者はオーストラリアをどう見ているか」について報告。恩地氏が実施した調査でも、オセアニア地域におけるオーストラリアの観光国としての人気度は高い一方で、世界遺産に対する認知度はまだ低いと指摘する。また、オーストラリアの対日ピーアールが世界遺産をはじめとする文化的側面に注力するのと平行して、これまで人気デスティネーションであったケアンズやゴールドコーストの露出が減り、若者の間でもその魅力が失われているとした。

 オーストラリアへの日本人渡航者数が減少し続けている現状を見た場合、恩地氏はオーストラリア政府観光局(TA)の世界遺産やエコツーリズムへの誘導は、思ったほどの効果が現れていないのではないかと問題提起。1980年から90年代に訴求した楽しい観光というアプローチに立ち返り、ケアンズ、ゴールドコースト、シドニー、グレートバリアリーフなど、かつてブームを起こしたアーバンリゾートの強化に原点回帰すべきだと主張した。ブームを知らない若い世代にとっては、新しいデスティネーションになりうるというのが恩地氏の考えだ。

 また、学生市場の問題として自由になる時間が意外に少ない点をあげる。卒業旅行はマーケットとして成立するものの、夏休みは旅行代金が上がるため学生には手が届きにくく、旅行会社も学生をターゲットにしていないと述べ、学生の需要喚起には国際線の思い切った学生割引の仕組みを考えるべきだと強調した。そのうえで、修学旅行をはじめとする教育旅行については、学生(若者)層のオーストラリアへの支持がなければ成長は期待できないと指摘した。