休暇分散化は見直し、地域ブロックや分散化方法を再提案へ

  • 2010年12月17日
 観光庁は12月16日、休暇改革国民会議の第2回会合を開催した。議論は休暇取得の促進で総論賛成であったものの、中小企業の事業への影響や金融機関の決済などの観点から各論反対が根強く残るため、会議の結びに座長の三村明夫氏(新日本製鐵代表取締役会長)が第3回開催の来年3月までを期限として、観光庁に対して分散化案の見直しを求めた。その方向性は、分散化する地域ブロックの再考、秋の大型連休の試験的な導入、分散化実施までの時間の十分な確保など。さらに、分散化しても別々の地域ブロックに住む家族や友人間で共通の休日が確保できるよう、土日を挟んで前後に休暇を分散する案も示唆した。

 観光庁が大きな見直しを迫られる背景は、国民的な合意形成を得られていないため。第1回会議を開催した10月6日以降も分散化に対する反対意見や懸念が相次いで表明されている。特に、休暇分散化に関する内閣府特別世論調査では反対意見が56.1%と賛成の2倍ほどで、合意といえる状況には至っていない。このため、観光庁は当初来年3月をめどとしていた国会への法案提出に留まらず、休暇分散化の地域ブロックの見直しを迫られた格好だ。

 会議後、報道陣の取材に対して観光庁長官の溝畑宏氏は、政務三役と相談するとしつつ、当初めざした来年3月の通常国会への法案提出について、「申し上げられない」と述べ、事実上、白紙であることを認めた。当面は会議で出た2ブロック、3ブロックでの対応など、分散化の修正案の検討が急がれており、「国民的コンセンサスを得られる、より具体的な案を検討していく」と述べた。また、三村座長は「これをきっかけに閉塞感の中から脱し、日本を変えることが必要」という点では多くの意見が一致していることをチャンスと捕らえている考えもあわせて提示した。


▽観光業に対する不信感も

 今回の第2回会合出席者からは、休暇が分散化されて旅行に行きやすくなった場合でも、旅行・観光業界の価格設定に対する不信感も示された。「旅行・観光業界から料金がピークにはならないという提示がなければ信頼できない」とし、料金が安く旅行に参加できる利点を明示してほしいとの意見が出された。また、他の委員も「移動費が欧州に比べて高い。これが変わらないと、(旅行者が増えて経済が活性化するという)メリットにはならないのでは」との疑問を呈した。

 こうした意見に対し、トラベルビジョンの取材に応じた日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)会長の舩山龍二氏は「旅行代金やツアー商品の試算をしてみたい」との考えだ。そのほか、秋にTIJが展開している秋休みウィークで割安感のある商品を設定しているが、旅行会社、交通機関、宿泊機関が幅広く連携して商品改革をしていく必要があるとの考えも述べた。