年間アクセスランキング、1位は新型インフル、「付加価値」の取り組みも

  • 2009年12月26日
 2009年もあと6日になりました。旅行業界で働く皆様にとって、今年は多分に厳しい1年であったのではないかと思います。年間のアクセスランキング上位100位でも、1位はやはり新型インフルエンザです。あれさえなければ、と恨み言の一つもいいたくなりますが、旅行業界が受けた被害の大きさは今さら書き連ねるまでもないでしょう。また、航空会社の減便・運休、コミッション関連、日本航空(JL)の再建計画などの話題も多数ランクインしており、昨年のリーマン・ショックに端を発する旅客需要の減少がいかに業界に影響を与えたかを物語っています。

 厳しい環境の中で、旅行会社も店舗網の再編やオンライン販売の強化など利益の確保に向けた取り組みを進めています。中でも、最大手であるジェイティービー(JTB)が店舗網再編の方針を打ち出した衝撃は、皆様の関心の高さからも窺えます。100位には入っていませんが、エイチ・アイ・エス(HIS)も「かなり大胆」(HIS平林朗社長)な店舗の統廃合を考えているといいます。HISの場合は統廃合を含めて実際には純増の予定ですが、いずれにしても、店舗網のあり方が変化する予兆と受け取れそうです。

 旅行関連商品や情報の流通インフラである店舗と店舗網は、旅行会社にとって最大の経営資源の一つです。しかし、インターネットが進化を続けて流通インフラとしての役割を担いつつある今、“オフライン”の旅行会社にとって店舗の開設、維持の判断はこれまで以上にシビアにならざるを得ないでしょう。店舗に頼らない阪急交通社が好調な業績を残していることも、その意味では象徴的に映ります。今年8月に旅行事業を始動したセブン&アイ、同じく10月にサイトを本格稼働したCCCのTトラベルなど他業種で会員基盤を持つ企業が旅行業に参入する動きもあり、2010年は流通形態のさらなる多様化が顕在化するかもしれません。

 一方、旅行会社の“付加価値”に対する取り組みもランクインしています。“付加価値”とは“旅行会社だからこそ提供できるなにか”と定義できますが、会社によって、あるいはお客様によって異なります。このため、これまでも議論が続けられてきたにもかかわらず、なかなか明確な解決策は見つかっていません。しかし、その実現が業界の発展につながるものであることに疑いの余地はありませんし、業界環境を考えれば2010年はこれまで以上に各社が自らの“付加価値”を打ち出さなくてはならない年になると思われます。

 個人的には、旅行会社の“付加価値”の実現は、もう一つの大きな経営資源である“人”がカギを握っていると考えています。低コストですみ、24時間労働もいとわないコンピュータと同じ土俵で人間が張り合っていても、勝負にならないからです。人だからできるサービス、人だから作れる商品、そして人だからわかる人の気持ちがあるということが、“価値”の基礎になるのではないでしょうか。

 100位に入った中で、日本旅行の“カリスマ添乗員”である平田進也氏や、HISいい旅研究室室長の染谷明彦氏のインタビューは、それぞれのお立場や会社として“価値”とどう向きあうかのスタンスが表れています。ある意味では対照的な内容ですが、いずれもお客様の気持ちに向き合う大切さを訴えています。内容に賛否はあるかもしれませんが、個人あるいは組織として結果を残しているお二方の言葉がなにかのヒントにつながれば幸いです。

 2010年の見通しは、依然として明るいものではありません。国内線コミッション廃止の可能性や新型インフルエンザ第2波などの懸念もあります。しかし、悲観してばかりでは事態は好転しません。財団法人日本交通公社(JTBF)が2010年の出国者数を約7%増の1660万人と予想しているように、回復の兆しは見えています。そして、2010年は首都圏空港の発着枠拡大や日米間をはじめとする航空自由化が予定され、外部環境からも旅行業界の潮目が変わる可能性が大いにあります。「病は気から」といいますが、明るい兆しを大きな流れに変えるためにも、業界で働く皆様にはぜひ明るく笑顔で新年を迎えていただきたいと願っております。

 今年も1年間、ご愛読いただきましてありがとうございました。2位と3位に燃油サーチャージの記事が入りましたが、今年から航空会社各社の燃油サーチャージ額を一覧表として掲載したことをご評価いただいたのではないかと勝手ながら喜んでおります。来年も皆様のお役に立てるよう紙面の充実を進めてまいりますので、ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします。(松本裕一)


▽アクセスランキング・記事ランキング(2009年1月6日〜12月25日)
第1位
新型インフルエンザ、各社が対応進める−メキシコ以外は現状維持(09/04/28)

第2位
燃油サーチャージ、廃止は30社−米系は全社ゼロに、欧州系は少数(09/06/29)

第3位
燃油サーチャージ、外航22社が廃止を申請−出発日ベースの設定は5社(09/05/22)

第4位
日系航空会社2社、減便・運休を追加−中国、バンコク、インド線が対象(09/01/20)

第5位
旅行大手各社の発券手数料−ゼロコミッションで4月1日からの導入、値上げも(09/03/30)

第6位
日本航空、間接部門を統廃合−ジャルパック支店は機能残し廃止(09/08/31)

第7位
燃油サーチャージ、外航30社が値下げ認可、廃止は2社(09/03/13)

第8位
ルックJTB、安売りから撤退−JTBWV北島社長が明言、「4つのWIN」めざす(09/09/18)

第9位
セレブツアーが営業停止−航空券のネット販売で被害は150名、1800万円以上(09/03/26)

第10位
全日空、国内線コミッション廃止/削減へ−旅行会社と交渉開始、11年度まで(09/11/02)

第11位
日本航空、成田・関空路線を一部減便−アジア8路線、座席供給量は3.6%減(09/06/16)

第12位
セブン&アイが旅行業に進出へ−子会社設立、文化教室事業から開始(09/01/14)

第13位
オペレーターのディスカバリーツアーが営業停止−フィリピンなど取り扱い(09/08/07)

第14位
日本航空、再建で社員6800名削減、外航と共同事業立ち上げへ−地点撤退も(09/09/16)

第15位
JTB、4月以降の役員体制を決定、「次の100年」見すえて若返り(09/03/02)

第16位
新「デルタ航空」、ブランド統一は来年1月−首都圏空港拡張後は新路線も(09/01/16)

第17位
日本航空、内際18路線を運休・減便、5地点撤退−国際線座席供給量は2割減(09/11/06)

第18位
トップインタビュー:アマデウス・ジャパン代表取締役 大竹美保氏(09/01/14)

第19位
HIS、欧州エキスプレスの全株式を取得−当面はブランド・社員など維持(09/01/26)

第20位
JTB、国内店舗の削減に着手、「数は未定」−コスト削減でウェブに注力へ(09/11/27)

第21位
日本航空、国際2路線を減便、機材小型化は3路線−4億円強の収支改善へ(09/12/10)

第22位
全日空、燃油サーチャージを大幅値下げ−90%近く減額、韓国は片道200円に(09/02/17)

第23位
旅行会社5社、修学旅行代金でカルテルの疑い−公取委が立ち入り検査(09/03/12)

第24位
エティハド航空、成田就航に向け準備進む−旅行会社経由の販売に期待(09/09/24)

第25位
日本航空、静岡空港から撤退−県知事は搭乗率保証の支払い拒否(09/12/18)

第26位
全日空、グループ航空会社を3社に再編へ−新戦略、1000億円収支改善めざす(09/11/02)

第27位
日本航空、09年度はチャーターで100億円めざす−規制緩和の活用は検討段階(09/04/06)

第28位
JALスカイチーム移籍、大韓航空とのすみわけ不可能−AAアジア太平洋社長(09/12/07)

第29位
全日空、「緊急対策」実施へ、通期に赤字転落予想−第3四半期は92%減益(09/02/02)

第30位
全日空、燃油サーチャージを復活−設定期間を2ヶ月に、業務の煩雑化に懸念(09/08/19)

第31位
アルファトラベルサービス、自己破産申し立て−負債額は約1億5000万円(09/10/05)

第32位
全日空、新ブランドで競争力強化へ−旅客目線でサービスを刷新(09/11/11)

第33位
新型インフルでメキシコに「渡航延期」−WHOのフェーズ引き上げで(09/04/28)

第34位
主要旅行会社、08年の海外旅行取扱額は5.5%減−プラス成長は14社(09/02/09)

第35位
ヴァージン、日本/豪州路線は東京か茨城を検討−NHなどと協力の意向(09/06/16)

第36位
ベトナム航空、燃油サーチャージを廃止−外航各社も検討進める(09/02/18)

第37位
JTB、グループ各社機能再編へ−店舗、国内商品改革でタスクフォース設置(09/11/30)

第38位
就職人気、文系はJTBグループが1位−明確な仕事内容提示が選社理由(09/03/16)

第39位
旅行各社の社長が入社式で訓示―「厳しい時こそチャンス」(09/04/02)

第40位
修学旅行キャンセルは450件以上、東京と川崎でも発生で今後の影響に懸念(09/05/21)

第41位
旅行会社の1位はエイチ・アイ・エス、100社中3社ランクイン−就職希望調査(09/04/10)

第42位
美瑛岳死亡事故、「主催」会社が旅行業未登録−茨城県が調査開始(09/07/27)

第43位
「日本航空は再生可能」−JALタスクフォース、若手中堅社員の活躍に期待(09/10/30)

第44位
JTB、オンライン販売専門サイトを開設−新たな顧客層開拓、初年度50億円めざす(09/01/07)

第45位
エティハド航空、2010年2月に中部、3月に成田へ乗り入れ(09/10/30)

第46位
HIS、移動型店舗の運用を開始−移動車で旅行相談サービスを提供(09/04/20)

第47位
第1種のメトロポリタン、21日から営業停止−関係者には廃業を報告(09/05/25)

第48位
JALホテルズ、ホテル・ニッコー・ロンドンを5ツ星ホテルとしてリニューアル(09/12/22)

第49位
成田、日系2社の発着便36便が欠航−航空機炎上でA滑走路が閉鎖(09/03/23)

第50位
KNT、中期計画を修正、販売・費用構造を革新−ウェブ強化、不採算部門撤廃(09/08/12)

第51位
アシアナ航空、茨城空港への就航決める−茨城/仁川線をデイリーで運航(09/02/03)

第52位
インタビュー:日本旅行 おもしろ旅企画ヒラタ屋代表 平田進也氏(09/11/25)

第53位
ウォン安の今だから、ちょっと贅沢に韓国ショッピング(4)(09/01/15)

第54位
オーストラリア政観、「オージー王子診断」で旅のテーマを提案(09/12/18)

第55位
日本航空、燃油サーチャージを値下げ、適用条件も減額−全日空と同水準に(09/02/23)

第56位
新型インフル第2段階、旅行会社各社が対策−観光庁やJATAが要請(09/05/19)

第57位
ヴァージン会長、日本/オーストラリア路線就航に意欲−「18ヶ月以内」(09/06/03)

第58位
日本航空、国際線の便名を再編へ−2010年度以降の増便にそなえる(09/04/21)

第59位
ジャルパック、社長交代へ−JL新役員体制で高橋氏は経営企画室長に(09/02/19)

第60位
全日空国内線コミッション、包括旅行用は廃止、個札は半減へ−JLも「検討」(09/11/16)

第61位
デルタ航空、日本路線も受託手荷物に課金−7月出発分から適用へ(09/04/28)

第62位
全日空、座席供給量を約7%減へ、増減便計画−収支改善で有料サービス拡充も(09/08/03)

第63位
トップインタビュー:ユナイテッド航空 太平洋地区副社長ミュラー氏(09/09/08)

第64位
旅行業倒産件数、4月は7件で4億9800万円−小規模倒産多く(09/05/15)

第65位
日本航空、国際線の運休・減便10路線・週57便−通年供給11.2%減へ(09/08/07)

第66位
「燃油サーチャージ値下げが旅行の契機」は58%、ヨーロッパの人気上昇か(09/02/12)

第67位
定額給付金で海外に−HIS、JTB西日本が格安ツアー発売(09/03/10)

第68位
年末年始の海外旅行は安近短が顕著もパリ3位に−エイビーロード集計(09/12/11)

第69位
JAL再建は再生支援機構を活用へ−前原大臣、運航継続を重要視(09/10/30)

第70位
インタビュー:エイチ・アイ・エス いい旅研究室室長 染谷明彦氏(09/04/28)

第71位
セブン&アイが旅行事業を始動、自社商品34コースから−初年度50億円めざす(09/08/28)

第72位
JATA、新型インフルで観光庁へ要望書を提出−修学旅行などへの影響受け(09/05/14)

第73位
JTB首都圏、6支店を年内で閉鎖−スタッフ配置などは調整中(09/12/09)

第74位
阪急交通社が業績好調、メディア販売と価格戦略奏功−第4四半期てこ入れも(09/11/17)

第75位
JATA、サーチャージ復活阻止で要望書提出へ−運賃一本化の検討会設置を提案(09/07/21)

第76位
中部、顧客満足度の国際空港評価で旅客規模別の1位を獲得、総合でも4位に(09/03/12)

第77位
KNT、09年は出足好調、前年2倍も−組織改正の効果を最大限発揮する年に(09/02/13)

第78位
特集:「若者の海外旅行離れ」(1)、「時代のリーダー」を対面取材(09/07/07)

第79位
KNT、希望退職は192名−転身支援金7億円の特損、12億円の費用削減見込む(09/10/26)

第80位
日系2社、燃油サーチャージを撤廃、需要喚起に期待−制度のあり方検討も(09/05/08)

第81位
旅行業倒産件数、1月は2件で負債も小額−宿泊業は大型倒産が発生(09/02/10)

第82位
阪急交通社と阪神航空が統合へ−業務渡航専業会社も設立(09/04/01)

第83位
キャセイパシフィック航空、日本路線を維持・拡大へ−50周年の取り組みも(09/02/06)

第84位
日本旅行、カリスマ添乗員が新組織、顧客最優先で格安商品を打破(09/11/17)

第85位
成田冬スケジュール、国際線旅客便は大幅減も国内線は過去最大に(09/11/02)

第86位
全日空も成田・関空路線の休減便など検討−緊急収支改善策を策定(09/07/02)

第87位
ANAセールス、代理店への保証金増額−ANTA、国内線コミッション含め協議へ(09/11/09)

第88位
日系2社、09年度路線計画を決定−増減便あわせ国際線座席数は約8%減(09/01/29)

第89位
10月の旅行業倒産件数は5件で負債総額13億1900万円−10億円規模倒産が1件(09/11/12)

第90位
シンガポール航空、4月から発券手数料廃止の意向−アジア系各社に動きも(09/02/04)

第91位
燃油費の引き下げ、続々と−OSは3月から、GAは水準変更、SQは日系と逆転(09/02/25)

第92位
日本航空、国際線で22便を減便、一時的措置−羽田/香港も対象、韓国は増便(09/03/02)

第93位
シンガポール航空、A330の最新機内設備を公開へ、6月から名古屋線で運航(09/04/27)

第94位
JALグ、旅行と航空券の営業部門をジャルセールスに移管−10月1日から(09/04/23)

第95位
普門エンタープライズ、営業停止−被害は約5000名、3億円規模か(09/03/24)

第96位
新春トップインタビュー:ジェイティービー代表取締役社長 田川博己氏(09/01/07)

第97位
燃油サーチャージ、外航25社が廃止から再設定へ−「ゼロ」継続も(09/10/01)

第98位
日本航空、中部/成田/パリ線の運航を開始−直行便運休を補完(09/09/29)

第99位
キャセイパシフィック航空が路線再編、景気後退の影響で−日本路線も対象(09/04/21)

第100位
旅行業の生き残り戦略とは、異業種の事例に学ぶ−JATA経営フォーラム(09/02/27)