花で旅する世界(4)オーストラリア 西オーストラリア州

  • 2009年3月19日
固有種の花々の宝庫

 コアラやカンガルー、エリマキトカゲなど、珍しい動物で知られるオーストラリアは固有種の宝庫だ。5千万年前にゴンドワナ大陸から分離し、地球上のほかの地域から隔離された環境が、生物の独自の進化を助けてきた。動物だけでなく、植物にもオーストラリア原産のものは多く、2万5000種以上といわれる自生植物のうち、約1万7000種が固有種だ。

 国内のあちこちで美しい花を見る旅が可能だが、なかでも最も印象的な光景が見られるのは、西オーストラリア州の州都であるパースを中心としたエリアだろう。西オーストラリア州は国土面積の約3分の1を占めるオーストラリア最大の州だが、面積の90%は砂漠または半砂漠。そこに1万2000種もの植物が自生しており、そのうち75%が州の固有種である。

 7月、南半球にあるオーストラリアに春が近づくと、普段は赤茶けた大地にブッシュが生い茂るだけの場所に、世にも美しい光景が出現する。ピンクや黄色のエバーラスティングの花が大地を地平線まで染め、カンガルー・ポーをはじめとするユニークな姿の花も見られる。花の種類は非常に多く、ところどころで目を楽しませてくれる。

春を告げる「ワイルドフラワー前線」

 花の見どころとして知られるのは、州都パースを起点として南北それぞれ500キロメートルの広大なエリア。北はジェラルトン、もしくはカルバリーあたりまでで、南は西オーストラリア州最南端のアルバニーまでの区域だ。面白いことに、西オーストラリアには日本の桜前線にも似た「ワイルドフラワー前線」がある。北部で7月中旬から咲きはじめた花は次第に南下し、南部では11月中旬ごろまで見られる。花が咲く範囲が広い上、種類も豊富なため、比較的長期間にわたって花を楽しめるのが特徴だ。

 パース市内で気軽にワイルドフラワーを楽しむことも可能。市西部にあるキングス・パークには自然のままの森が広がり、春には色とりどりの花が咲き競う。9月には5日間にわたってワイルドフラワー・フェスティバルが開催され、西オーストラリア州全域から集められた3000種類ものワイルドフラワーが一堂に会する。同じ時期に、個人宅の庭を開放する「オープンガーデンスキム」があるので、あわせて訪れたい。丹精込めて作られた庭を訪れ、花を愛するオーストラリア人の笑顔に触れれば、オーストラリアの花の旅はいっそう充実したものになるだろう。

 西オーストラリア州政府観光局によると、花をメインする旅では9月以前なら世界遺産シャークベイなどと組みあわせて北部へ、9月はパース中心、10月以降であればマーガレットリバーのワイナリー巡りなどと組みあわせて南部へ、といった旅程をすすめる。パースの沖合に浮かぶリゾートアイランドのロットネスト島での滞在を加えると、旅のアクセントとなるだろう。おみやげを探すなら、パースの南方30分ほどの港町フリーマントルがおすすめ。週末のマーケットでは、100以上もの小さな店が、手作りの品々や名産品が販売するという。ユーカリやバンクシアのはちみつなど、ワイルドフラワーに関するものも売られており、花の旅にぴったりだ。


▽西オーストラリア州政府観光局
http://www.westernaustralia.com/jp/



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