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ビジネストラベラー:旅行会社の配慮にきめ細かさを期待

  • 2007年11月1日
今回は東レの李木(すももぎ)氏へのインタビュー。日本から全世界向けの輸出を李木氏、一人で担当するというくらい海外との関わりが深い方だ。学生の頃に南オレゴン州立大学へ2年間の留学経験を持ち、異文化への理解にも深い造詣を備える。今回はこうした氏の経験も踏まえ、ビジネス旅行についての経験、考えなどを聞いた。
(聞き手:山見インテグレーター代表、山見博康氏)
※2005年10月、月刊トラベルビジョン掲載

Q:これまで訪問した国、出張の頻度や最近の状況をお教え下さい

これまでは韓国、中国、マレーシア、シンガポールなどアジア各国をはじめ、ドイツ、イタリア、スペイン、フィンランド、イギリス、ベルギーのヨーロッパ、ブラジル、アメリカ、メキシコ、カナダの南北アメリカなど、15ヶ国以上でしょうか。

出張はおおよそ年7回から8回ぐらい。一回の出張は1週間程度です。最近は、8月中旬に1週間ほどブラジルに出張しました。また、直近は10月中旬に中国に行きました。ほとんどの出張が海外での営業を目的としています。

Q:御社での海外出張は増えていますか

数字は把握していませんが、出張者数は確実に増えていますね。海外ビジネスの拡大は会社の方針でもあるので当然です。

特に、アジアへの出張は全社的に伸びています。私の担当はプラスチックス事業のコンデンサー用フィルムの輸出です。世界各地100社くらいの顧客への営業活動、および技術サービスなどを、シンガポール、上海、香港、フランクフルトの営業拠点と協力してマーケティングしています。フィルム事業全体では、海外生産比率が7割以上にのぼるなど、海外のお客様が拡大していることから、これからも出張は増えるでしょう。

Q:旅行準備で気をつけていることは何でしょう

まず、パソコンと携帯電話が何といっても必需品です。パソコンを持ち歩くのでいつでも仕事ができ、海外出張といっても感覚としては東京にいるのとあまり変わりませんね。海外出張用の携帯電話は英国仕様なので、それに合ったプラグを持参しますが、パソコンのプラグはどこでも必ず日本製品用のコンセントがあるので、特別なものを用意しなくても対応できます。

常に決まった持ち物は特にはありませんが、薬くらいは常備しますね。ただ、長期になるとやはり本などは欠かせません。機内では本を読む以外は休んでいることが多いですね。

おおよそ一回1週間の出張が多いので、衣類は背広を2着、ネクタイ3本。ブレザーは持っていきませんが、替ズボンは一本必ず持参します。下着は日数プラス1日分です。

Q:安全への秘訣は何とお考えですか

盗難を防ぐには、とにかく荷物を身体に常に接触させておくことが秘訣でしょう。私は、立っている時でも座っている時でも、荷物を足で挟み、バッグは肩からかけておくなど、身体に触れさせておきます。また、身を守るには治安が悪いところには絶対に近寄らない、という単純なことを守ることでしょう。

私は学生時代から多くの地域に行きました。旅慣れした利点といえば、ニューヨーク、ロサンゼルスなど都会で危険なところに近づくと、「気配を感じる」という感覚的な訓練が出来たことでしょうか。何となく危険そうな雰囲気、そう、「におい」という方が良いでしょう。安全そうなところでも歩いていてここは「やばい!」などと感じますね。いわゆる「いやな感じ!」のところには、まず近寄らないことです。

Q:盗難に会う等、失敗した経験はありますか

それが、これまでこれといった失敗はないのです。もともと慎重なところがあるかも知れません。仕事中心なので、出歩くことがほとんどないことも原因でしょうか。

Q:これまで海外で困った経験はありますか

最近、技術者2人を同行し、ブラジルのサンパウロ経由で南端のポルトアレグレへ出張したときは、日本航空を利用してニューヨークでワンストップするフライトでした。ところが、サンパウロ到着のフライトが遅れ、朝7時着の予定が9時頃になり、国内線フライトに間に合わなくなったのです。理由の一つは、国際線と国内線の空港の場所がちょうど成田と羽田のように離れていたのです。

現地の日本航空スタッフが、予約した乗り継ぎフライトに間に合わないということで、当初とは違う国内空港に案内しようとしたところまでは良かったのです。ところが、我々をタクシーに乗せ、行き先を告げて、そのまま送り出されました。行き先も分からず言葉も通じにくく、不安が募りましたね。ただし、何とかあまり遅れずに事なきを得たことは救いでした。そこでの改めての教訓としては、地方の空港事情や国内の乗り継ぎローカル便の運航状況をよく調べて旅程を組むということですね。

Q:世界の各地に旅されてもっとも印象に残っている国や町はどこでしょう

世界のあらゆるところで、異なる民族、宗教、気候があり、それぞれの場所ごとに興味深いことですね。印象に残る地は多いのですが、あえて言えば、中国の河南省です。もともと歴史モノが好きで日本史は当然のこと、中国の歴史をはじめ世界史に関する本をよく読んでいます。その中で、河南省では三国志に出てくる地名がありますね。そうした歴史的地名のその場所に、「自分が現実に立っている」と思うと感無量になります。

中国・瀋陽から西へ5時間くらい車で行くと、阜新(ふしん)という町があります。対向車線のある細い一本の道路を走るわけですが、途中、数百キロもの道の両側は地平線、行っても行ってもコーリャン畑です。家も無く、建造物がどこにも見当たらないのです。ところが、ところどころでロバに乗った人が畑で働いているのです。日本で見るような農機具があるわけでもなく、人力で農業を営んでいるのでしょうが、自然と人間の美しいバランスというか不思議な気持ちに打たれたことも、印象的です。

また、スペイン南端のマラガも印象的です。遠く向こうにアフリカの陸地が見えますが、そこはモロッコの北端です。地球の雄大さを感じますね。

Q:海外出張時、座席利用規程はありますか

原則はエコノミークラスです。勿論、役員や部長、我々でも、10時間以上のフライトで機中での仕事を織り込んだ過密なスケジュールの場合や、同行者、乗り継ぎリスクなどを考慮し、場合によってはビジネスにするなど臨機応変に対応するよう考えています。役職、あるいはビジネスクラスとエコノミークラスのコストの差額だけで判断される事項ではありません。あくまで出張者の安全が第一で、リスク回避の視点、仕事がそれ以上にはかどること等を考慮して、旅程を組んでいます。

Q:企業として旅行会社に求めるサービスの順位などを教えてください

弊社の場合、旅行の手配は子会社の東レトラベルが行います。私の場合、日程表のほとんどを自分で作り、ホテルなどは現地の駐在員、お取引先や顧客などに頼むか自分で予約します。したがって、基本的な依頼事項は航空券の予約だけです。

一般的に旅行会社に望むことといえば、まずリスク情報の提供と緊急時のサポート体制でしょう。次にコスト、そして手配の確実さではないでしょうか。

私自身の危機管理の考えにおいては、現地でもしもの際でもアテンドしてくれる人を、必ず確保しておくことが大切だと思います。それは旅行会社の方でもいいし、現地駐在員でもいい。いざという時への備えですから、お客様にお願いしても良いと思います。飛行場からホテルや顧客までのロジスティクスなどが、確実に確保できていると実に安心して出張ができます。

旅行会社もユーザーが不慣れな地域での一人の出張なのか、旅慣れしているか、同行者があるかどうかなど、状況に応じた情報提供などの心配りをすると喜ばれることでしょう。

ありがとうございました。

李木 朋晴 (すももぎ・ともはる)氏
東レ株式会社 フィルム事業部
工業材料事業第2部 コンデンサー材料販売第2課
 


1998年 入社。静岡県三島工場、フィルム製造部
1999年 フィルム貿易部(東京)
2001年 現部署、現在はプラスチック事業部門でコンデンサー用のフィルムの輸出担当
会社概要 設立:1926年1月/従業員:約3万3707名(うち単独6638人、国内関係会社9574人、
海外関係会社1万7495人)/拠点:国内26ヶ所(本社、技術センター、工場含む)