法律豆知識(第80回)〜広告やパンフレットで掲載する食事の写真


パンフレットや広告の写真については、第66回で解説した。
JATAの「旅行広告作成ガイドライン」では、旅行日程に関係のない旅行目的地のイメージ、旅情等を写真又はイラストを用いて表現するときは、原則的には、写真、イラストがイメージである旨を明示する必要があるが、日程表の記載のない、表紙や目次、旅行コースについての一般情報等を提供するページや、旅行手続き案内などのページでは、イメージである旨を明示しなくてもよいとされている。

風景写真などは、この原則論で構わないと思われるが、食事については、もう少し細かな検討が必要と思われる。
食事の善し悪しは、その旅の成否を決めるくらい重要である。食事に満足できないと、その不満は相当尾を引くし、他の面も不満になってしまうことも多いようだ。しかも、パンフレットに掲載されていると、そのような食事が食べられると、思いこんでしまう傾向が強いようだ。
景色の写真であると、確かに、日程表のあるページでなければ、単に旅情をかきたてるものと思えても、食事となるとそうはいかないようで、あとから苦情が来るケースが目につく。
食事の写真やイラストは、それにより旅情をかき立てられるというより、それが食べられるはずという具体的な情報として受け止められる傾向が強いようだ。
したがって、無用なトラブルの防止の観点から、食事については、仮に日程表の記載のないページであっても、実際に出される料理のみを記載することに努め、そうでないときには、イメージ写真であることを明示した方が良いであろう。

最近は、旅なれた旅行者が増え、パックツアーでも特色を出さないと売れない時代になった。グルメツアーも、その一つで、人気も高いようだ。しかし、グルメツアーの場合は、さらに慎重な対処が必要と思われる。
ガイドラインでは、「グルメツアー等と称して、名物料理等の特別な料理を賞味することを目的とする旅行では、提供される料理の内容を具体的に表示すること。ただし、利用する店がその店名を表示するだけで、提供される料理内容が旅行者にも容易に判り得るほどの有名な店であるときは、具体的な料理内容は省略することができる」とある。
「提供される料理の内容を具体的に表示」となると、厳しすぎると感じるかもしれないが、グルメと謳った以上、旅行者は、うまいものが出るはずと期待している。その期待と実際とのミスマッチがあると深刻なトラブルが生じてしまうのである。
この種のトラブルを防止するには、事前に料理の内容を具体的に呈示し、かつ、それに相応する料理を出すことである。ガイドラインはそのことを言っている。
グルメツアーでは、仮に日程表に記載のないページでの掲載でも、この原則を貫いた方がよいと思われる。料理の写真は、料理の具体的内容を最も端的に、かつ印象深く提供するものだ。従って、グルメツアーでは、仮に日程表に記載のないページでの掲載でも、料理の写真があれば、そのような料理が出ると誤信される危険は強い。
イメージである旨表示すれば、ガイドラインの趣旨は満たすであろうが、実際はそれだけでは危険なのである。むしろ、実際には出ない料理の写真やイラストは、パンフレットのどこのページにも掲載しないことにした方が無難であろう。
=====<法律豆知識 バックナンバー>=====
第79回 添乗員無しのツアーの落とし穴〜緊急連絡先
第78回 「ハンパな処理」がトラブルを呼ぶ〜応用事例
第77回 「ハンパな処理」がトラブルを呼ぶ
第76回 ツアー中の雪崩事故とガイドの責任
第75回 羊蹄山有料登山ツアー凍死事件と教訓
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