【Founder’s Eye】対馬へ行って来た

  • 2026年6月29日

オーバーツーリズムが社会問題となる一方で、日本にはまだ十分に知られていない魅力的な地域が数多く残されている。

その象徴の一つが対馬だと思う。

6月上旬、その対馬を人生で初めて訪れた。

正直に言うと、行く前の印象はかなり偏っていた。
福岡より韓国に近い国境の島、パチンコ目的で韓国の方が多く訪れる場所。

その程度の認識だった。

しかし、地元の人の話を聞き、島内を巡ってみると、手付かずの自然、豊かな海の幸、そして大陸との交流が育んだ独自の文化を今に伝える日本に残された数少ないフロンティアとして、日本人にとっても訪日客にとっても素晴らしいデスティネーションとなり得る場所だった。

防人の島としての歴史を学ぶ、シーカヤックでの無人島回り、本物の漁船での漁業体験、マグロ畜養の現場視察、海上の秘密基地での特別な釣りや食事、ツシマヤマネコの観察や撮影等々、コンテンツには事欠かない。

これらのコンテンツを造成している人達が、これまたエッジが立っている。
漁師をカッコいい、稼げる職業にしようと奮闘している若者、漂流ごみなどの負の側面に正対して取組むベテランの観光会社オーナー、Uターンして家業の旅館を継ぎつつ新たな挑戦もしている夫婦等々、皆元気で失敗を恐れず、突っ走っている。

彼らに会って、話を聞くだけでも十分にお金と時間をかけて行く価値がある。

実際、最近は複数の大手企業が様々な社員教育目的でこの島を訪れている。また、大人ばかりではなく、小中学生をこの島に送りこんで、1週間でも2週間でもホームステイさせれば、教室では得られない学びを得られると強く感じた。

そして何といっても「食」。
取れたての魚介を敢えて「石焼き」で食べる、穴子の刺身(殆どの人が初体験だと思う)、これまでは捨てられていた「迷惑魚」の加工品、伝統的な鍋「いりやき」、ろくべえやとんちゃん、十割蕎麦等々。
たまりません…

実は夜の楽しみもある。特に外国人にとっては、日本独特のスナック文化を体験できることも対馬の魅力の一つだろう。

しかし、ご多分に漏れず、十分な来訪者が年間通して来るわけでは無い。
この島そのもの、そこで様々な挑戦をしている人を盛り立て、島民の生活を脅かさず、より良い未来を築くのに、島外の観光産業が果たせる役割は在ると思う。
一方、島に新たなホテルを建てる計画が有り、賛否両論が有る様子。部外者が軽々に口を出すべきでは無いかも知れないが、島の本質的価値の維持のためには、新たな施設建設よりも、農泊や宿坊を含めた既存の宿泊施設の稼働を上げる施策が望ましいのでは無いだろうか。

対馬で感じたのは、観光の価値はその土地のありのままの魅力と、そこで挑戦する人々から生まれるということだ。彼らの挑戦をどう支え、どう伝え、どう旅行者との出会いにつなげていくか。観光産業に携わる一人として改めて考えさせられる旅だった。

来月のこのコラムでは、欧州の富裕層専門旅行会社を実際に訪ねての気付きや欧州の今に関して書きます。なお、来月からはこのコラムはLINE版に先行掲載致しますので、宜しければLINEの登録をお願い致します。

今月の一軒(出張メシ)

■肴や えん(対馬)

・対馬で魚の養殖・加工、体験、宿泊事業を行う会社が運営する飲食店。
・朝水揚げされたばかりの地元ならではの魚が刺身や焼き物、揚げ物で食べられる。

必食:鯖や穴子に加え、是非「そう介のメンチカツ」を!
予算:1500円前後(ランチ)
メモ:次の対馬出張でも必ず行きます

岡田直樹
エフネス(トラベルビジョン)Founder。旅行業界向けメディアの運営を軸に、観光領域の事業開発に取組む。