観光庁、次期観光立国推進基本計画案を最終審議 「戦略産業」として地方誘客など強化

  • 2026年3月11日

 交通政策審議会観光分科会は3月11日、次期「観光立国推進基本計画」(2026~2030年度)の案について最終審議を行い、概ね妥当との認識で了承した。観光庁は今後、与党手続きなどを経て3月中の閣議決定を目指す。計画では観光を日本経済を牽引する「戦略産業」と位置づけ、訪日客6000万人や消費額15兆円などの目標を掲げるとともに、オーバーツーリズム対策や地方誘客を強化する方針だ。

 観光庁によると、今回の分科会では事務局が提示した計画案について大きな異論はなく、「前向きで妥当な内容」との評価が委員から相次いだ。細かな文言修正については分科会長一任とされ、分科会としては計画案を概ね了承した。

 新たな基本計画では、観光を地域経済や日本経済の発展をリードする戦略産業と位置づける。2025年の訪日外国人旅行消費額は約9.5兆円で、経済波及効果は約19兆円規模に及ぶとされており、こうした実績を踏まえ、観光政策を成長戦略の柱として推進する方針を明確にした。

 一方で、観光客の集中による混雑やマナー違反などの課題にも対応する。観光立国推進基本計画でオーバーツーリズム対策を位置づけるのは今回が初めてで、生活道路や公共交通の混雑、観光施設の過密などの課題を整理し、予約制の導入やパークアンドライド、手ぶら観光など地域の実情に応じた対策を進める方針だ。

 計画の柱としては、インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立、国内交流・アウトバウンド拡大、観光地・観光産業の強靱化の3つを掲げた。特にインバウンド政策では、これまでの「受入れ」から「戦略的誘客」へと表現を改め、リピーターの獲得や多様な国・地域からの誘客を進めることで、特定地域への集中を緩和する狙い。

 地方誘客の強化も重要なテーマとなる。2030年には訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円の達成を目標としつつ、地方部の外国人延べ宿泊者数を1億3000万人泊とする目標を掲げた。これが実現すれば、現在は三大都市圏と地方で7対3とされる宿泊の偏在が、将来的には1対1に近づく可能性があるとしている。

 また、国内旅行やアウトバウンドの回復にも取り組む。休暇の分散や二地域居住の促進、パスポート取得環境の整備などを通じて旅行需要を喚起するほか、日本政府観光局(JNTO)の機能も活用し、各国の政府観光局との連携強化や観光当局間の協議、相互交流キャンペーンなどを通じて双方向の交流拡大を図る方針。こうした取り組みにより、訪日客の誘致だけでなく、日本人の海外旅行の促進も含めた国際交流の拡大を目指す。

 さらに、観光DXや省力化投資による生産性向上、ユニバーサルツーリズムの推進など観光産業の基盤強化を図る。

 委員からは、リピーターの増加は地方訪問の拡大やマナー向上に加え、消費額の増加にもつながる可能性があるとの指摘があったほか、人数だけでなく消費単価の向上を重視すべきとの意見も出された。観光庁はこうした意見を踏まえ、訪日客の一人当たり消費額について「まずは25万円の達成を目指す」との表現を計画案に盛り込み、高付加価値化を進める考えを示している。

 なお、オーバーツーリズム対策に取り組む地域数の目標は2030年に100地域と設定した。現在は約47地域が対策に取り組んでいるが、訪日客6000万人時代を見据え、今後はさらに多くの地域で混雑やマナー対策を進める必要があるとしている。

 新たな基本計画における目標値(案)は以下の通り。

区分 指標 2030年目標 直近実績
インバウンド 観光客の受入れと住民生活の質の確保との両立に取り組む地域数 100地域 47地域(2025年)
訪日外国人旅行者数 6000万人 4268万人(2025年推計)
訪日外国人旅行者に占めるリピーター数 4000万人 2761万人(2025年速報)
訪日外国人旅行消費額 15兆円 9.5兆円(2025年速報)
訪日外国人旅行消費額単価 25万円 22.9万円(2025年速報)
訪日外国人旅行者の地方部延べ宿泊者数 1.3億人泊 5873万人泊(2025年速報)
国際会議開催件数 アジア最上位・世界5位以内 世界7位(2024年)
国内交流・アウトバウンド 国内旅行消費額 30兆円 26.8兆円(2025年速報)
日本人の地方部延べ宿泊者数 3.2億人泊 3.0億人泊(2025年速報)
日本人の海外旅行者数 過去最高(2008万人)超 1473万人(2025年推計)
観光産業 宿泊業の付加価値額 6.8兆円 4.3兆円(2024年度)