催行保証が生んだ信頼――“絶対にキャンセルしない”経営が築いたEdison Travelの成長軌跡 - Peter KUO氏

 「たとえ1名でも、絶対にツアーをキャンセルしない」――。1988年の創業以来、この“催行保証(Guaranteed Departure)”を掲げ続けてきたのが、台湾・台北を拠点とするEdison Travelだ。ビジネス客向けの日帰りツアーからスタートし、欧米市場を中心にテーラーメイド旅行へと事業を拡大。パンデミックでは200万ドルの損失を抱えながらもスタッフを解雇せず、再開後は迅速に回復を遂げた。その背景には、創業者Peter氏の一貫した経営哲学がある。台湾インバウンド市場の変化と今後の展望について話を聞いた。

-創業の経緯とビジネスの変遷について教えてください。

Peter KUO(郭裕家) 氏(以下敬称略) 私がこの旅行会社を創業したのは1988年です。それ以前はツアーガイドをしていました。当時の上司は英語を話せず、多少英語ができた私がオフィス業務や経営にも関わるようになりました。その後、上司が株の暴落で資産を失ったことを機に、私がビジネスを引き継ぎました。

創業当初は、ビジネス客向けの「デイリーツアー(日帰りツアー)」が主力でした。日本の「はとバス」のようなスタイルですが、当時の台湾は観光客がまだ多くなく、主なターゲットは出張で訪れるビジネス客でした。彼らは非常に多忙で、仕事後の午後など限られた時間しか観光に充てられません。人数不足でツアーがキャンセルになれば、その貴重な時間が失われてしまいます。そこで私は、「Guaranteed Departure(催行保証)」という方針を打ち出しました。たとえ予約が1名でも絶対にツアーをキャンセルしないという約束です。

日系企業の駐在員事務所を一軒一軒訪ね、「日本からの出張者が来たら、1名でも必ず催行する」と営業しました。実際には1名のために車とガイドを出せば赤字になります。しかし私はそれを信頼を得るための投資と考え、決してキャンセルしませんでした。その結果、「自分一人のためにツアーを出してくれた」という体験が高く評価され、口コミで広がりました。この“絶対にキャンセルしない”という安心感が、日本の旅行会社や駐在員事務所からの信頼につながり、Edison Travel成長の原点となりました。

2000年頃からインターネットが普及し、会社は世界的に知られるようになりました。当初は半日ツアー中心でしたが、信頼の積み重ねにより、5日間の台湾周遊ツアーなども催行保証で実施するようになり、事業は拡大していきました。

-御社の得意分野や主要な顧客層について教えてください。

Peter 現在の主力市場は、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなど英語圏です。ビジネスの約50%がヨーロッパ、40%がアメリカを中心とする英語圏からの顧客です。

当社はもともと「S.I.C.(Seat in Coach)」と呼ばれる混載型の定期観光バスツアーからスタートしましたが、現在は顧客の細かな要望に応えるテーラーメイドツアーに力を入れています。バードウォッチングや登山、宗教関連のツアーなど、価格よりも内容を重視する富裕層向けの手配が増えています。

ユニークな実績としては、レジデンスシップ「The World」の地上手配があります。乗客ではなく“レジデント(居住者)”と呼ばれる超富裕層が台湾に寄港する際のツアーを担当しています。今年は異例の6日間滞在が予定されています。

-日本市場についての印象や関わりは?

Peter 言葉の壁もあり、日本市場は最優先ではありませんが、英語対応が可能な日本の旅行会社や、登山専門の旅行会社などと取引があります。

また、沖縄や佐世保の米軍基地に駐留する兵士とその家族向けのツアーも扱っています。彼らは英語圏の旅行者で、日本から近い台湾を休暇先として選んでいます。