AI時代のエージェント真価-ベルトラ創業者 荒木篤実氏
AI時代におけるエージェントという役割について再考してみましょう。まず、広告業界。彼らはエージェントという言い方を嫌っていて、昔から広告会社といいたがる傾向があります。つまりただの「代行」というイメージを払拭し、「自ら仕掛けている」イメージを植え付けたいのでしょう。
自動車業界には、販売代理店という制度があります。これはまさには販売とアフターサービスを「代行する代理店」であり、基本は取り扱う1社のメーカー(ブランド)を決めて、専売対応します。例外はYANASEのように複数メーカーを扱う会社ですが、彼らは「いいものだけを世界から」という輸入車専門というブランディングをしており、富裕層を中心にそのイメージ戦略は長年にわたり奏功しています。
さて、旅行代理店はというと、これは若干YANASEモデルに近いといえますが、顧客の個別のニーズにあわせたいわゆる手配旅行もあり、基本なんでも取り扱うので、1番複雑な形態ともいえるでしょう。またYANASEのように、顧客をしぼった戦略をとっている会社も全体からみると少ないのも特徴的です。
これらの実態を、顧客目線でみるとどうなるのでしょう。広告業界は、一般の消費者には、実際に接する機会がほぼないため、裏方にしかみえません。
自動車業界は、車を日々利用する人にとっては、アフターサービスなどで、かなり親密な関係をもつ相手となります。なので、ブランド力は担当する人でほぼ決まってきます。
では、旅行業界ではどうでしょう。ここでしか買わない、と決めている旅行者もいるでしょうが、基本はあまりそこまでロイヤリティは高くはなく、値段と価値、これらを判断基準に都度、自由に選んでいる、というのが大勢の消費者の利用実態でしょう。
AI活用が当たり前の時代に、さて旅行産業におけるエージェント業務とは一体どのような意義があるのかを考えてみると、消費者が自分自身では発見・創造できない価値を提供・提案してくれるかどうか、これが1つの大きな決め手ではないかと思えてきます。
広告は、わざわざみたくはないけど、宣伝したいクライアント企業が電博などのエージェントを黒子として使い無料コンテンツの代償としてプッシュしてくるので、消費者には直接はみえませんし、必要悪のようなものです。
自動車は欲しいメーカー群があれば、それらの直営販売店に足を運ぶだけですが、その後のライフサイクルの長さから、購買を起点にしたLTV(ライフタイムバリュー)が相互に生じてきます。
さて、では旅行に行こうかな、と思い立った時、最初にエージェントを思い浮かべる消費者はいったい何%いるのでしょうか。AIである程度、大雑把で不正確とはいえ、旅のイメージを作れる今の時代に、まずはどこどこの会社の何さんに相談してみよう、あるいは、まずはインターネットで、あの会社のwebサイトから質問してみようと思う消費者が、、いったいどのぐらいいるのでしょうか。
消費者に「何を約束するのか」、それがその会社のブランド価値。これは、長年かわらない私の持論です。誰でもどこでも販売しているただの入館チケットをいくら並べたところで、いまやそんな会社に、消費者は真のブランド価値を見出すことはまずないでしょう。安売りの大量販売のロジックはかつての小売王ダイエーの終焉がすべてを語っています。「誰をターゲットに」「どんな価格で」「独自の価値を」みせて、それをどう「保証(約束)」していくのか。そこが勝負どころになる時代がもうきていると感じます。
今、市場から求められているのは、顧客の理解力、商品サービス開発力(創造力)、そして約束を守る「コミット力」の3つであり、これらをしっかり構築しコミュニケーション維持できた会社だけが、AI時代に生き残れるエージェントとなるのでしょう。
パクサヴィア創業パートナー。日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。ベンチャー経営とITマーケティングが専門。ITを道具に企業成長の本質を追求する投資家兼実業家。




