商品造成まで踏み込む“結果にコミットする研究機関”――ツーリズム総合研究所石原義郎氏が描く新しい観光支援の形

-「商品造成」という言葉が出ましたが、旅行会社ではないツーリズム総研がどのように関わるのか、少し詳しく教えてください。

石原 我々は旅行業免許を持っていませんから、商品造成を直接行うことはできません。

 我々の役割は“支援とマッチング”です。今後立ち上げる「クオリティ・ツーリズム研究会」に、旅行会社の方々に入ってもらい、みんなで議論しながら商品を造成してもらう。総研はあくまで黒子的な立場で、環境を整え、つなぎ、支援していく役割を担います。

-他の研究機関との差別化ポイントについて教えてください。

石原 大きく三つあります。まず、実務家ネットワークの豊富さです。顧問委員会には元観光庁長官、前奈良県知事、観光団体や大学教授など、政策・学術・実務の各分野の第一人者が参加しています。

 次に、送客まで責任を持つ姿勢。調査で終わらせず、自治体やDMOと旅行会社をマッチングし、実際のツアー造成まで支援します。そして三つ目が、海外・国内・訪日の三領域を統合的に捉える視点です。真の双方向観光交流を推進できる、ツーリズム専門の総合研究機関を目指しています。

-コロナ禍を経て、旅行業界にはどんな変化が起きたと感じますか。

石原 旅行者の価値観が大きく変化しました。単なる移動や宿泊ではなく、「本当に価値ある体験」を求める傾向が強まっています。

 一方で、インバウンドは回復していますが、アウトバウンドの戻りは鈍く、特に若年層の海外旅行離れが深刻です。今、業界が取り組むべき最大の課題は、真の双方向観光交流の実現だと思います。インバウンド偏重ではなく、日本人が海外を知り、海外の人が日本を知る。その循環をつくること。そして量の拡大ではなく、高付加価値な旅行を通じて持続可能なツーリズムに転換していくことが求められています。

-中小旅行会社との連携に注力されるそうですが、その意図を教えてください。

石原 はい。大手旅行会社には豊富なリソースがありますが、中小旅行会社には地域に根ざした発想力や柔軟性があります。そこを活かしたいと考えています。

 マーケティングや商品開発のノウハウが不足しているケースも多いので、観光局や自治体から受託した事業の中で、旅行会社と地域をマッチングし、FAMツアーや販売支援を通じて新たな商品づくりを支援します。中小旅行会社が元気になることが、業界全体の多様性と競争力の向上につながると確信しています。