商品造成まで踏み込む“結果にコミットする研究機関”――ツーリズム総合研究所石原義郎氏が描く新しい観光支援の形
元「ウイングトラベル」編集統括の石原義郎氏が代表を務めるツーリズム総合研究所が、7月のキックオフを経て本格的に活動を開始した。海外・国内・訪日旅行を三位一体で捉え、双方向交流と持続可能なツーリズムの実現を掲げる新たな研究機関だ。
なかでも特徴的なのが、調査や分析にとどまらず、旅行会社とデスティネーションをマッチングして商品造成を支援し、送客につなげるという“研究機関としては異例”のアプローチ。産官学の有識者を迎えた体制を整え、中小旅行会社支援や高付加価値旅行の造成、さらには政策提言まで幅広く展開する同研究所。石原氏に、その設立背景と取り組みの方向性を聞いた。
石原義郎氏(以下敬称略) 日本のツーリズム産業を長年見てきて、三つの大きな課題を感じていました。
第一に、海外旅行、国内旅行、訪日旅行がそれぞれ別々に議論され、三位一体での成長戦略が描けていないこと。第二に、調査や研究の成果が実際の送客や事業成果につながりにくいこと。そして第三に、業界の知見やネットワークが十分に活かされていないことです。
こうした課題を解決し、日本の観光をもっと面白くするために、実務家のネットワークを活かして成果の見える化まで責任を持つ研究機関を立ち上げようと決意しました。
石原 従来の研究機関は、報告書を納品すれば業務が完了するケースが多いと思います。でも私たちは、そこで終わらせたくない。
調査や分析を行った上で、旅行者を実際に送客し、地域に経済効果をもたらすところまでを目指しています。 観光局や自治体、DMOから受託するプロモーションやマーケティング事業でも、調査結果を旅行商品造成や販売促進にまでつなげる。これが「結果にコミットする」姿勢の根幹です。
石原 たとえば観光局への提案では、商品造成をして実際に送客するところまでをやらないといけないと感じています。観光局には、「この商品造成でこのくらいの人を送り、全体でいくらの経済効果になる」と具体的に提案するつもりです。その成果の一部を助成金やマージンという形で還元してもらう、そうしたスキームを検討しています。


