TIFS会員インタビューVol.21 「トライセクター」の視点が地方を変える—高知市議・TIFS副理事 横山公大氏が語る次の観光戦略
TIFS会員の取り組みをご紹介するシリーズ第21弾は、TIFS副理事でもある横山公大高知市議をご紹介する。一般社団法人 新観光創造連合会(TIFS)副理事を務める横山公大氏は、民間(事業家)・公共(市議会議員)・社会(業界団体や地域活動) という三つの領域を横断し、観光・地域づくりの課題に向き合う「トライセクター型リーダー」だ。旅館業で培った現場感覚、オルトルでの事業家としての実行力、そして地域・業界団体でのネットワークと社会的役割。それらを統合し、「未来を見据える・見せる」という視点で地方自治体の壁や既成概念を超えた施策を提言し続けている。本インタビューでは、横山氏のキャリアの歩みから、観光政策、地方観光の未来、そして次世代へのメッセージまで、多面的な活動の核心に迫る。

横山 公大 氏(以下敬称略) 私のキャリアは、高校中退から始まりました。17歳で板前として働き、19歳の時に居酒屋の社長やおかみさんから「高校だけは出ておきなさい」と背中を押され、定時制高校に通い直しました。23歳で卒業したのを機に興味のあった海外へ向かい、ニュージーランドのホテル・カールトンの日本食レストランで働きました。永住も視野にありましたが、実家の母の大病で帰国し、26歳で土佐御苑に入社しました。
旅館業では「日本一」を目指して走り続けました。また、旅館業界の若手ネットワークである全旅連青年部でも活動し、後に青年部長を務めました。全国の旅館・ホテルの経営者たちと議論する中で、業界全体の課題解決に関わる面白さと“社会セクター”としての役割を強く意識するようになりました。しかし、現場で何か新しい挑戦をしようとすると、いつも「ルールの壁にぶち当たる」。この経験から、「いつか自分がルールを作る・変える側にまわらなければ、本質的な改善はできない」と強く思うようになりました。
40歳で独立し、飲食業とコンサルティングを手がける株式会社オルトルを設立。そして44歳で高知市議会議員に挑戦し、新人トップで当選しました。現在は、旅館業で培った人脈や現場の知恵が、市議という立場でこんなに活きてくるものか、と驚くほどです。
横山 私が携わる三つの領域は、民間(Private)/公共(Public)/社会(Social) です。
・民間(Private):オルトルでの飲食・コンサルティング事業
・公共(Public):市議会議員としての公務
・社会(Social):TIFS副理事・地域産業の連携・観光団体での活動
ある方に「これはまさにトライセクターだね」と言われた時に、すごく腑に落ちました。昔で言えば「三足のわらじ」ですが、私にはこの三つの立ち位置がある方が相乗効果が出てちょうど良いのです。
地方議員という仕事は、都市の規模にもよりますが、兼業でないと現実的に成り立たないエリアもあります。だからこそ、民間の仕事で課題を見つけ、公的な立場で解決するという循環が機能します。多くの議員が「安全・安心」「福祉・教育」を軸に活動する中で、私は特に“未来を見据える・見せる”政策に力を入れています。地域の課題が出た時は、「市議として」ではなく、「自分が市長ならどうするか」で判断するようにしています。
横山 高知の観光を「三方よし」で発展させる上で最も重要なのは、意思決定の世代構造です。観光関連のキャンペーンが立ち上がると、60代・70代の男性が委員長や理事に就くケースが多い。しかし、観光の主要ターゲットは40代以下。そのニーズを70代の感覚で判断するのは限界があります。40代が主体となり、20〜30代が育つ構造をつくるべきです。併せて女性の視点も必須ですね。
また、若者が市政に関われる仕組みも作りたい。「若いインフルエンサーや地元愛が強い人材で構成された、政策提言チーム」を市長サイドに置くべきです。過去に高知でも、ブログのオフ会がきっかけで市長を巻き込み、強力な情報発信チームができたことがありました。あの成功モデルは再現可能だと確信しています。

