渋谷未来デザインとJATAが連携、「Go Global Project」で若者の海外旅行促進へ

  • 2025年10月29日

 渋谷未来デザインと日本旅行業協会(JATA)は10月29日、若者の海外旅行促進を目的とした共創型プロジェクト「Go Global Project」の発足を発表した。JATAが推進する「もっと!海外へ」と連携し、パスポート取得支援や体験機会の創出などを通じて、次世代層の海外渡航を後押しする狙いだ。

 同日には都内で発表会が開催され、観光庁の根来恭子参事官(旅行振興担当)をはじめ、渋谷未来デザインの長田新子理事・事務局長、JATA海外旅行推進部長の松岡正晴氏、関西エアポートやKDDI、実践女子大学など産官学の関係者が登壇した。

 冒頭で長田氏は「若者の海外志向が低下し、パスポート保有率も17%にとどまる。海外体験を通じて国際感覚を育む機会を社会全体で支えたい」と述べ、渋谷から始まる実践的な支援モデルの構築を目指す考えを示した。

 JATAの松岡氏は、海外旅行需要が2019年比で約7割にとどまる現状を踏まえ、「もっと!海外へ」プロジェクトを紹介。「渋谷発の新しい発信を通じ、若者が一歩を踏み出す機運を高めたい」と連携の意義を語った。JATAでは新パスポート取得キャンペーンや、俳優の岩田剛典氏を起用した啓発活動などを展開しており、今回の協働でより若年層への接点を拡大する。

 観光庁の根来氏は、アウトバウンド拡大を担う新組織「旅行振興参事官」設立の背景を説明し、インバウンドとの相互作用により、双方向の国際交流が日本の観光基盤を支えると強調。アウトバウンドの回復が航空路線維持や地域活性にも寄与するとの見解を示した。

 教育機関からは実践女子大学の内田雄介氏が登壇し、学生調査の結果を報告。「約9割の学生が海外に関心を持つ一方、実際に渡航経験があるのは5%にとどまる」と述べ、費用負担や語学不安などを解消する仕組みづくりの必要性を訴えた。

 続くトークセッションでは、それぞれの立場から具体的な方策が議論された。関西エアポートの岡部ジェム氏は、若者の海外経験を社会全体で支援する重要性を指摘し、「企業の福利厚生として海外体験を組み込むような仕組みがあってもよいのではないか」と提案。海外体験が個人の成長のみならず、日本の国際的な存在感を高めることにもつながると語った。

 渋谷未来デザインとJATAは今後、参画団体を拡大しながら、パスポート支援やインターンシップの推進など、若者の行動を後押しする取り組みを進める。全国的な展開も視野に、継続的なアウトバウンド促進活動を展開していく考えだ。