訪日客3000万人越え過去最速、オーバーツーリズム懸念も 村田長官「成長と共存両立」を強調

観光庁の村田茂樹長官は15日の定例会見で、2025年9月の訪日外国人旅行者数が約327万人(前年同月比14%増)となり、9月として過去最高を記録したと発表した。1~9月累計は約3165万人(17.7%増)に達し、過去最速で3000万人を突破した。航空便の回復や為替動向の影響もあり、インバウンドの約7割を占めるアジア諸国が前年同月比10%増と好調が続いている。一方、香港は台風による欠航の影響で12%減となった。
月 | 訪日外国人数 | 出国日本人数 | ||||
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2024年 | 2025年 | 前年比 | 2024年 | 2025年 | 前年比 | |
1月 | 2,688,478 | 3,781,629 | 140.7% | 838,581 | 912,298 | 108.8% |
2月 | 2,788,224 | 3,258,491 | 116.9% | 978,884 | 1,181,062 | 120.7% |
3月 | 3,081,781 | 3,497,755 | 113.5% | 1,219,789 | 1,423,449 | 116.7% |
4月 | 3,043,003 | 3,909,128 | 128.5% | 888,767 | 961,386 | 108.2% |
5月 | 3,040,294 | 3,693,587 | 121.5% | 941,709 | 1,076,756 | 114.3% |
6月 | 3,140,642 | 3,377,985 | 107.6% | 930,229 | 1,054,045 | 113.3% |
7月 | 3,292,602 | 3,437,118 | 104.4% | 1,048,823 | 1,205,435 | 114.9% |
8月 | 2,933,381 | 3,428,000 | 116.9% | 1,437,126 | 1,648,279 | 114.7% |
9月 | 2,872,487 | 3,266,800 | 113.7% | 1,212,545 | 1,394,500 | 115.0% |
10月 | 3,312,193 | 1,148,502 | ||||
11月 | 3,187,175 | 1,175,117 | ||||
12月 | 3,489,888 | 1,187,210 | ||||
1~9月 | 26,880,892 | 31,650,500 | 117.7% | 9,496,453 | 10,857,200 | 114.3% |
1~12月 | 36,870,148 | 13,007,282 |
村田長官は「インバウンドは力強い成長軌道にある」と述べ、10月以降の紅葉需要や年末年始の旅行需要にも期待を示した。そのうえで、「地域によっては混雑やマナー問題が見られる」として、観光の持続可能性を高める必要性を強調した。政府のオーバーツーリズム対策パッケージに基づく支援を継続する方針で、「国民生活と観光の両立を前提に進める」と述べた。自民党が新たに設置したオーバーツーリズム対策プロジェクトチームにも観光庁がヒアリング対応しており、予算確保を含めた施策強化を進める考えを示した。2030年に訪日客6000万人、消費額15兆円の政府目標があるなかで、村田長官は「増加ペースを抑える意図はなく、成長と共存の両立を図る」と発信した。
また、9月下旬に初めて愛知県で開催されたツーリズムEXPOジャパン2025愛知・中部北陸について、「来場者が約13万人に達し、当初目標を上回った」と報告した。会場では国内外のブースが盛況で、「多くの方がこのEXPOに期待を寄せていることを肌で実感した」と振り返った。イベントを通じて地方誘客や双方向の観光交流が広がる契機になったと評価し、「次回の東京開催にも大いに期待している」と述べた。
さらに、10月13日に閉幕した大阪・関西万博についても所感を示した。開幕以降、大阪府を主目的地とする国内旅行者は前年同期比約8割増となり、ホテル稼働率も上昇したという。欧州からの訪日客が増加したほか、京都や奈良、関東など周辺都市への周遊も確認された。村田長官は「万博を契機に国内外の相互交流が進んだ」と述べ、2027年3月に横浜で開幕予定の「GREEN×EXPO 2027」の活用も踏まえ、地方誘客とアウトバウンド促進を並行して進める考えを示した。