観光再興の起爆剤に―ツーリズムEXPO開幕、JATA髙橋会長らが登壇 石破首相もビデオ出演

石破茂内閣総理大臣

 観光業界最大級のイベント「ツーリズムEXPOジャパン2025 愛知・中部北陸」が9月25日に開幕した。オープニングセレモニーでは、石破茂内閣総理大臣によるビデオメッセージが上映され、「観光は地域の根幹的な産業」と発信した。続く主催団体記者会見では、日本旅行業協会(JATA)会長の髙橋広行氏が登壇し、アウトバウンド回復に向けた方針と新たな旅行需要創出の可能性を語った。

 石破首相はビデオメッセージの中で、「訪日外国人旅行者は過去最速で1000万人を超え、6月の消費額も前年比23%増と好調。こうした流れを全国に広げていくことが重要」と強調。また、開催地の愛知を含めた中部・北陸地域の連携の取り組みなどを評価し、大阪・関西万博や2027年国際園芸博覧会(横浜)を契機とした地方への波及効果に期待感を示した。

 セレモニーでは、主催3団体の代表をはじめ、国土交通省の吉井政務官、観光庁の村田長官、UN Tourism、WTTCなど国際機関の幹部が登壇。観光の持続可能性や、インバウンド・アウトバウンドの両輪による交流拡大の重要性を強調した。

(左から)JNTO蒲生理事長、JATA髙橋会長、瀬戸朝香氏、日観振最明理事長、中経連勝野会長

 主催団体による記者会見では、JATAの髙橋広行会長が「ツーリズムEXPOを通じて、アウトバウンド回復の機運醸成を行っていきたい」と述べ、アウトバウンド需要回復に向けた本イベントの狙いについて言及。「コロナ前に比べて日本人の海外旅行は7割程度の回復にとどまっている。中部は首都圏・関西に次ぐ海外旅行マーケットであり、海外旅行回復の起爆剤にしたい」と力を込めた。

 また、円安の影響については「為替は大きな要因だが、コントロール不能な状況を嘆いていても解決にはならない」としたうえで、JATAらが展開している「もっと!海外へ」プロジェクトを紹介。「2億円規模のパスポート取得費用補助キャンペーンなどを通じて、アウトバウンドの底上げに取り組んでいる」と説明した。

 旅行形態の多様化にも注目が集まっており、高橋会長は「アドベンチャーツーリズムは世界では主要マーケットに成長しているが、日本ではまだ浸透していない。新たなテーマ性の旅行を広め、新しい旅行需要を創出していきたい」と展望を語った。

 会見には、日本観光振興協会の最明仁理事長や、日本政府観光局(JNTO)の蒲生篤実理事長も登壇。蒲生氏は、本イベントと合同開催しているインバウンド商談会「VISIT JAPANトラベル&MICEマート2025」の取り組みを紹介。270社の海外バイヤーが来日し、地域への誘客強化に向けた視察も実施されるとして、「実体験を通じて、多様な訪日旅行商品が造成されることを期待している」と述べた。

 開催地を代表して登壇した中部経済連合会の勝野哲会長は、「中部・北陸9県が力を合わせて初の共同ブースを出展した。観光資源を4つのテーマ(ものづくり・歴史・自然・食)で表現し、来場者に直接体験してもらえる構成にした」と述べ、地域横断的な連携の強化をアピールした。

 このほか、スペシャルサポーターに就任した俳優の瀬戸朝香氏も登壇。地元・瀬戸市出身としての思いを語り、「旅はリラックスと癒し、そして人との出会いがある。行ったことのない場所へのきっかけになれば」とメッセージを送った。

 「旅は"知"の再発見」という本年のテーマのもと、観光を通じた地域創生と国際交流が一体となった今回のイベントは、9月28日までの4日間にわたり開催される。業界関係者にとってはBtoBのビジネス拡大とネットワーキングの機会、一般来場者にとっては新たな旅行の価値に出会う場として、大きな期待が寄せられている。