カナダ・オンタリオ州が観光戦略を日本市場に本格発信、日本人旅行者向け体験強化に注力

カナダのオンタリオ州観光局は9月8日、パンデミック後初となる主催メディアイベントを都内で開催した。同州観光・文化・ゲーミング担当大臣のスタン・チョー氏が初来日し、観光局幹部や関連都市の代表とともに、日本市場に向けた戦略や最新プロジェクトを紹介した。
チョー大臣はインタビューで、「日本市場は質の高い観光客が多く、文化・自然など多様な体験を求めている。オンタリオ州はそうしたニーズに応えるポテンシャルを持つ」と語った。ナイアガラの滝やトロントに加え、オンタリオ北部に広がる自然、オタワや古都キングストンなど、多面的な観光資源を活用し、通年型の誘客を図る考えを示した。
また、同州が現在注力するのが文化・観光インフラへの投資だ。ロイヤルジョージシアターへの3500万ドル規模の改修投資、ワサガビーチの宿泊・レジャー施設の整備に加え、ナイアガラの滝近くの旧トロント発電所を五つ星ブティックホテルへと転換する再開発プロジェクトが進行中で、オンタリオ州全体で滞在価値の向上を図っている。
一方で、日本市場における課題としては航空アクセスの限界と旅行スタイルの多様化を挙げ、今後は「オンタリオ州全域の観光事業者と連携しながら、サービス品質の向上、日本語対応の強化、日本人旅行者のニーズに合った体験の提供に努める」と述べた。特に「認知の拡大」という点でも、継続的なマーケティング活動と日本の旅行会社らとの連携が不可欠とした。
観光需要の回復については「日本からの渡航者数はパンデミック前には戻っていないが、将来的な成長の余地は非常に大きい」と強調。日系文化がカナダに深く根付いていることや、同州のミシュラン星付きレストランの3分の1が日本料理店である事実などを紹介し、日本との文化的親和性を発信した。
プレゼンテーションでは、ナイアガラ公園管理局CEOデイビット・アダムズ氏が、8月に開業した新アトラクション「ナイアガラ・テイクス・フライト(Niagara Takes Flight)」などを紹介。ナイアガラの滝に隣接するテーブルロック・センターに設置された同施設は、吊り下げ型シートから巨大ドーム映像を体感するフライングシアターで、一部のナレーションを映画監督ジェームズ・キャメロン氏が務める。先住民族の物語や地質的歴史などを盛り込んだ構成により、没入感のあるストーリーテリングが楽しめるという。
イベントには、日本在住・オタワ出身のアーティストでMONKEY MAJIKのメイナード・プラント氏も登壇。オタワやキングストン、リドー運河などを巡った自身の旅番組が9月21日に放送予定で、トークセッションでは世界遺産であるリドー運河について、クルーズやカヤックなど様々なアクティビティを体験できることから「カジュアルに楽しめる世界遺産」と表現し、「家族での旅行にも最適」として日本人旅行者にも親しみやすい旅先であることをアピールした。