TIFS会員インタビューVol.19 チャーターと失敗論で切り拓く、クルーズ市場の未来ービュート村田 洋一氏

  • 2025年9月18日
  • 出典:一般社団法人新観光創造連合会(TIFS)
-千葉へのインバウンドへの取り組みについてお聞かせください。

村田 千葉市からはインバウンド誘致の協力依頼もいただいており、インバウンド促進協議会のメンバーとして、外国人旅行者に千葉を楽しんでもらえるような取り組みにも関わっています。どうしても鴨川シーワールドやマザー牧場など大型施設に点で向かうことになりがちですが、大型バスが入りにくい観光地もハイヤーであれば訪問可能です。そうした千葉の観光地を線で結び、多様な魅力を感じてもらえるような展開を目指しています。その際には、これまでYouTubeで培ってきた情報発信やデータ分析の知見も活用し、訪日外国人向けに効果的なプロモーションを行っていきたいと考えています。

 さらに、将来的にはインバウンドに関わる体験アクティビティの販売においてプラットフォームを構築していきたいとも考えています。既存のプラットフォーマーは手数料が高いという課題があるため、より公正で持続可能な仕組みを目指し、地域資源をつなげていくことが目標です。

-最近取り組んでいる挑戦についてお聞かせください。

村田 10月17日~18日にかけて、2026年5月をもって引退することが発表されているにっぽん丸を一隻丸ごとチャーターし、「にっぽん丸お別れクルーズ」を国内主催旅行として予定しています。初の取り組みであり、大きな挑戦です。船内でのイベントはもちろん、松山で下船した後のツアーなども企画しています。

 初めてのことではありますが、会社として大きな節目の取り組みになると考えており、お客様に特別な体験を提供できるよう力を入れています。もちろん万全を期して準備をしている一方、私自身が大事にしているのは「失敗の余白を残す」ことです。完璧を求めず、挑戦して失敗する余地を残すことで、次に改善できる学びが得られます。失敗を知識に変え、経験を積み重ねてこそ成長できると考えています。

-様々な挑戦をされていますが失敗エピソードはありますか。

村田 自分たちはたくさん失敗してきました。例えばコロナ禍にはLINEスタンプを作りましたが、鳴かず飛ばずで知り合いにしか販売できませんでした。マスクを仕入れて販売し、最初は好調だったものの、大量発注後に規格が変更された商品が届き始めて大量の在庫を抱えることになったり、古民家再生に挑戦したものの本格的な参入に失敗しビジネスにつなげることができませんでした。しかし、そうした経験がすべて今の事業の糧になっています。

 夢中になって挑戦したことは会社を前に進める力になります。LINEスタンプのキャラクターは今度ぬいぐるみにして販売予定ですし、古民家再生はインバウンド事業につながっています。このように一見失敗に見えるものが後になって新しい価値につながることもあります。最後の最後まで何が失敗かなんてわからないものです。「失敗していません」という人は、おそらく何も挑戦していないのだと思います。だからこそ、小さなことでも挑戦して失敗している人の方が、ずっとすごいと思えるのです。

-今後の会社としての展望についてお聞かせください。

村田 私は、せっかく会社を始めたからには行けるところまで会社を大きくしていきたいと考えています。雇用もどんどん増やし、利益を上げて税金を納め、社会の真ん中を歩けるような業界にしていきたい。そのために新しい分野にも進出し、どこまで大きくできるのかに挑戦してみたいと思っています。旅行会社で雇用を増やしながら拡大する事例は多くありませんが、そんな仲間が増えれば旅行業界はもっと面白くなるはずです。

-トラベルビジョンの読者へのメッセージをお願いします。

村田 クルーズは飛行機やパッケージツアーとは違い、港の場所や手配の特殊性から新しい挑戦が必要です。ただし、日本の市場規模は現在30万人規模ながら、100万人は超えられるポテンシャルがあります。ジャパネットたかたが新規層を大量に取り込んでいるように、まだまだ未開拓の余地が大きい。だからこそ、多くの旅行会社にぜひチャレンジしていただきたいと思います。仕入れについても船会社との契約に基づき弊社からも旅行会社の皆さんへ卸して販売できるケースがあり、協業は歓迎しています。私自身としては、業界全体でクルーズの取り扱いボリュームを増やしていくことが最も重要だと考えています。競争よりも「市場拡大」に力を注ぐことで、旅行会社も、そして消費者も恩恵を受けられるはずです。

 加えて、クルーズ市場はまだ成長途上で、競合よりも「一緒に市場を広げる仲間」が必要です。ぜひ業界の皆さんとも連携しながら、日本にもっとクルーズの魅力を広めていければと思います。

株式会社ビュート
クルーズ専門旅行商品の企画・販売

Youtube BUTEクルーズちゃんねる

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