秡川長官、アウトバウンド振興へ 次期計画にJATA提案反映の意向示す

 観光庁の秡川直也長官は6月18日の定例会見で、5月の訪日外国人旅行者数が約369万人となり、5月として過去最高を記録したことを明らかにした。前年同月比では22%増で、インバウンド需要が堅調に推移していることがうかがえる。一方、5月の日本人出国者数は約108万人で、こちらも14%増となったが、依然として回復は道半ばであるとし、アウトバウンド市場のさらなる拡大に向けた取り組みの必要性を強調した。

2025年訪日外国人数・出国日本人数(前年比)
訪日外国人数出国日本人数
2024年2025年前年比2024年2025年前年比
1月2,688,4783,781,629140.7%838,581912,298108.8%
2月2,788,2243,258,491116.9%978,8841,181,062120.7%
3月3,081,7813,497,755113.5%1,219,7891,423,449116.7%
4月3,043,0033,908,900128.5%888,767961,382108.2%
5月3,040,2943,693,300121.5%941,7091,076,800114.3%
6月3,140,642930,229
7月3,292,6021,048,823
8月2,933,3811,437,126
9月2,872,4871,212,545
10月3,312,1931,148,502
11月3,187,1751,175,117
12月3,489,8001,187,207
1~5月14,641,78018,140,100123.9%4,867,7305,555,000114.1%
1~12月36,870,14813,007,282

出典:日本政府観光局(JNTO)

 秡川長官は、今年3月に発出された「もっと!海外へ 宣言」や、日本旅行業協会(JATA)による岩田剛典さんを起用したプロモーション施策が一定の効果をあげているとの認識を示した。その上で、「夏休みシーズンを控え、JATAとも連携し、旅行需要の喚起に引き続き注力したい」と述べ、関係業界と協調した取り組みを強化する姿勢を示した。特にJATAからの提案については、現在策定中の次期観光立国推進基本計画に反映させる方針を明言した

 6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)」においては、観光政策に関する記述が引き続き厚く盛り込まれた。秡川長官は「地方誘客の促進、持続可能な観光地づくり、国内交流の拡大など、観光庁が重点として掲げている三本柱の施策がしっかりと明記されており、具体的な政策も含めてしっかり進めていきたい」と発信。政策は、2026年度から開始される5か年の観光立国推進基本計画において具体化される見通しで、観光分野が引き続き国の成長戦略の一翼を担うことが期待される。

 また、秡川長官は、日本政府観光局(JNTO)が今月に発表した高付加価値旅行者に関する調査結果に触れ、2023年の高付加価値旅行者の消費額が約1兆円に達し、2019年比で約50%増加したことを紹介した。旅行者数も同期間で約83%増となっており、観光庁の地方観光地支援やプロモーション施策の成果が表れていると説明。特に14か所のモデル観光地でのコンテンツ造成や販路開拓、宿泊施設を中心とした面的整備支援など、具体的な取り組みが奏功しているとした。

 会見ではこのほか、昨年7月の観光庁長官就任からの1年間の振り返りにも言及し、「ここまで好調な年は記憶にない」と述べた上で、ビジット・ジャパン事業開始から20年以上が経過し、継続的な取り組みが確実に成果をあげているとの実感を示した。今後は、三大都市圏に集中するインバウンドの流れを地方に広げることや、宿泊産業における人材不足の解消などに力を入れる意向を示した。