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ランデヴー・アン・フランス2023レポートPart1 本格的な復興を遂げるフランス・インバウンド市場

  • 2023年3月29日

ラグビー・ワールドカップ、パリ・オリンピックのメインスタジアム:スタッド・ド・フランス(Stade de France)

 1998年、FIFAサッカーW杯のメイン会場として建設されたフランス最大のスタジアムで、収容人数は約80000席。フランスチームは開催国として初優勝。1999年と2007年、ラグビーW杯開催。2023年ラグビーW杯は9月8日、フランス対ニュージーランド戦で幕開けし、全10試合が行われる。2024年はパリ・オリンピック・パラリンピックのメイン会場となり、競技種目はマラソン等を除く陸上全般と7人制ラグビー、パラリンピックのボチャの競技開催が予定されている。

 スタッド・ド・フランスと建設中のオリンピック・アクアティックスセンターを繋ぐ、ソフトモビリティの導線、自転車走行も可能な歩道橋(Passerelle)が架けられた。全長100m、幅18m。設置にあたって、2022年8月8日22時〜8月11日4時、高速道路A1とプレジダン・ウィルソン通りが54時間通行止めとなった。
RER B:La Gare de La Plaine-Stade de France、徒歩約8分
地下鉄13号線:Saint-Denis Porte de Paris、徒歩約10分

スタッド・ド・フランスは見学のみも可能
スタット・ド・フランスはスポーツの試合だけでなく、ビックネームのコンサートも行われる。2023年5月23日はビヨンセのコンサート開催。

新設競技会場:オリンピック・アクアティックスセンター(Centre Aquatique Olympique)

 隣接するスタッド・ド・フランスと、歩道橋で結ばれたオリンピック・アクアティックスセンターは、ル・ブルジェのクライミング・ウォールと並んで今大会のために新設される唯一のスポーツ施設 で、2023年末に完成予定。シンクロナイズド・スイミング、ダイビング、水球の予選が行われる。ユニット式プールを採用し、会期後は改修により水泳(レジャープール)だけでなく、バスケットボールやクライミング、ジムなどの施設が設けられる。座席はモデュール形式で、5000席から2500席まで規模の変更が可能。低炭素の施設で、生物由来の建築素材を使用し、5000㎡のサドル型の屋根を太陽電池で覆われた多くのエネルギーを自給自足できるフランス最大級の都市型ソーラーファーム。内装材にリサイクル素材を使用するなど、21世紀の「フランス流生活美学」のアピールも。北欧の木材を使った、天井部分の波を思わせる美しいフォルムが印象的。

ファサードは木材がふんだんに使われたミニマルなZenのイメージ。周辺は100本の植樹が行われるという。
水の循環システムの採用、環境負荷への低減等、極めて21世紀的な施設。

 水泳競技全般と水球の決勝は、パリ近郊ナンテールにある40000人収容のUアレナ(Paris La Défense Arena)で開催される。

環境に優しい選手村(Village Olympique : Pleyel-Bords de Seine)

 約2200室、15000人以上のアスリート・関係者が宿泊する選手村の建設が進んでいる。パリの北約7〜10kmに位置するサン・ドニ(Saint-Denis)、サン・トゥアン(Saint -Ouen)、リル・サン・ドニ(L’Ile Saint-Denis)の3自治体に囲まれたロケーション。総面積51ha、緑豊かなウォーターフロント、100%リサイクル・サスティナブル・エネルギー、カーボン・ニュートラル、生物多様性を重視する「21世紀の都市計画」を体現し、障害を持つ人のニーズを考慮し、「共生」をテーマに設計されている。選手村からスタッド・ド・フランスやオリンピック・アクアティックスセンターまで2km以内。その一方、去年の猛暑から、真夏に室内にエアコンがなくて大丈夫かと危惧する声があるのも事実だ。

 選手村の広大な敷地の中心にある「シテ・ドュ・シネマ」最大の建物「ラ・ネフ」は、かつて地下鉄の発電所として建設されたが1981年に解体され、いったん忘却の彼方へ。その施設が映画監督リュック・ベッソンにより再発見。全面的に修復され、ヨーロッパの一大映画産業の撮影及びサービスの拠点として再生した。240mx24mの巨大なガラス屋根で覆われた「ラ・ネフ」は期間中、隣接する中2階のレストラン「ラ・シテ」と共に 、選手達のメイン・レストランとなる。

 選手村は会期後、住宅(家族向け学生用、自治体により25〜40%が社宅)、事務所、ホテルや商業施設、保育園や学校、新規のスポーツ施設や公共施設等となり、地域住民・コミュニティに還元されるという。

選手村はセーヌ河が真ん中に流れ、中洲のリル・サン・ドニ島へ新しい橋が架けられる©Paris 2024

サン・ドニの歴史遺産、フランス歴代国王が眠る:サン・ドニ大聖堂(Basilique Cathédrale Saint-Denis)

 42人の国王、32人の王妃、63人の王子と王女の墓所。フランク王国と10世紀から19世紀の王政復古まで、4人を除く国王全員が埋葬されている。250年頃に殉教したパリの守護聖人サン・ドニの墓の上に建立されたサン・ドニ王立修道院は、王家の埋葬地となった。黎明期のゴシック建築によるファサードや後陣は、1135年から1144年にかけてスジェ修道院長の指揮、内陣等は1230年から1280年、サン・ルイの治世下で完成した。フランス革命期には暴徒化した民衆により建物も墓もことごとく破壊・冒涜されたが、1806年のナポレオン1世による修復令に始まり、19世紀のドブレやヴィオレ・ル・デュック等、今日に至るまで修復作業が絶えず繰り返されている。1966年にバジリカから大聖堂に昇格。また、サン・ドニ大聖堂はサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼地のひとつに数えられている。
地下鉄 : 13号線「Basilique Cathédrale Saint-Denis」徒歩約3分

サン・ドニ大聖堂外観©Pascal Lemaître Dist. Centre des monuments nationaux
祈りを捧げるルイ16世と王妃マリー・アントワネット像。墓は地下聖堂にある。

取材協力:フランス観光開発機構