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観光のサステナビリティ、コロナ機に取り組み強化を-TEJ観光大臣会合、官民連携訴え

 9月22日から25日まで東京で開催されたツーリズムEXPOジャパン2022(TEJ)に合わせて、22日には各国の観光大臣や業界団体のトップらが集まりパネルディスカッションを開催した。今年のTEJのテーマであるサステナビリティに焦点を当てたもので、登壇者はこれからコロナ禍からのリカバリーに取り組むにあたってコロナ前の状態に戻るのではなくより良い観光産業を実現することが重要であると強調。消費者や観光業者の教育、また観光への依存の高い小国を含めて各国がコロナ禍や天災などの危機を乗り越えサステナブルツーリズムの取り組みで取り残されることのないようにするための基金設立などの必要性が指摘された。

【登壇者】
カンボジア観光省国務次官 トック・ソコン氏
ジャマイカ観光大臣 エドモンド・バートレット氏
国土交通副大臣 石井浩郎氏
フィリピン観光副大臣 シャリマル・ホファ・タマノ氏
駐日本南アフリカ共和国大使 ルラマ・スマッツ・ンゴニャマ氏
スペイン観光庁長官 フェルナンド・バルデス・ベレルスト氏
ウズベキスタン副首相兼観光文化遺産大臣 アジズ・アブドゥハキモフ氏
アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)CEO シャノン・ストーウェル氏
太平洋アジア観光協会(PATA)副会長 ベンジャミン・リャオ氏
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)SVP マリベル・ロドリゲス氏
国連世界観光機関(UNWTO)賛助会員部本部長 イオン・ビルク氏
コネクトワールドワイド・ジャパン代表取締役 マージョリー・デューイ氏(モデレーター)

コロナ後の回復策はサステナビリティを不可分に

コネクトワールドワイド・ジャパン代表取締役のマージョリー・デューイ氏(右)と国連世界観光機関(UNWTO)賛助会員部本部長のイオン・ビルク氏

 世界はパンデミックから新型コロナウイルスとの共存へと舵を切り、観光産業でも入国制限を緩和、撤廃した国からリカバリーが始まっているところ。しかし登壇者の口からはそうした状況への安堵は聞こえず、むしろ今後もコロナ禍のような破壊的混乱は続いていくこと、その状況に直面した際にはコロナ禍で露呈した観光産業の脆弱性に再び苦しめられることなどへの危機感が多く示された。

 例えばジャマイカのバートレット大臣は、「今後の回復は直線的にはなり得ず、バリューチェーンの停滞や人手不足などによって混乱の度合いはコロナ禍そのものよりも大きくなる可能性がある」とし、そうした状況のなかでさらに気候変動などの問題にも取り組んでいく必要があることを指摘した。

 観光産業による気候変動対策では昨年に英国で開催されたCOP26に合わせ、UNWTOが中心となって「今後10年で観光産業の排出量を少なくとも半減し2050年までのできるだけ早い時期にネットゼロを達成する」ことを約束する「観光における気候変動対策に関するグラスゴー宣言」が採択。

 現在までに600以上の企業や団体が署名しているが、目標達成に向けては数多くのハードルが待ち構えているところ。

 ATTAのストーウェルCEOは「2024年、2025年あたりに悪い意味で元いた場所に戻っているのでは」と危惧したが、今回のパネルディスカッションではそうした危機意識を共有したうえで、各国・団体が持続可能な観光の実現に向けて実施している取り組みとそのために重要になる官民パートナーシップ(PPP)のあり方などについて情報や意見が交わされた。