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サービスを科学して再現性を高めたい―ESTINATE HOTEL那覇マネージャー 濱田佳菜氏

  • 2022年5月18日

ホテルの「心地よさ」を生み出すものとは
業界の労働環境の改善は現世代の責任で

-100人のビジネスパーソンのうちの3人に高頻度でリピートしてもらうのと、頻度は少なくても50人に選ばれるのとなら、どちらでしょうか。

濱田 正直に言えば、どちらにもお泊りいただきたいですね。ただ、例えば気の抜けない商談や接待を控えている到着初日は別のホテルに泊まり、仕事を終えてホッとした後は当ホテルで寛いでいただく、といった使い分けもありでしょう。飲みに来ていただくだけでも、それが次につながればいいのかなとも思います。

-主な集客方法や販促イベントについてお聞かせください。

濱田 集客はやはり広告が重要ですが、型通りの作業として準備もなく広告を買うのでは失敗します。コンバージョンが良く口コミのスコアが高ければいいわけではありません。その広告で来てくれたお客様のニーズとホテルのスタイルがマッチしなかったりもするからです。むしろお客様と交わす会話の1つ1つが次の顧客につながっていきます。出張で利用された方がプライベートの旅行で使っていただくこともあります。そうしたマーケティングはについてはまだまだ勉強中ですが。

 イベントについてはアルバイトの大学生スタッフやアート好きな社員など、個人的な発案も多く採用しています。私はイベント企画やアイデア出しが苦手で、全体を俯瞰して開催の準備段階で立ち塞がる壁を取り除く役回りに徹しています。イベントは好評で集客効果も高く、特に泡盛イベントは満員の盛況となり、参加者同士の交流が増える効果もあったので次回も検討中です。

 印象深かったのは、開業当初に実施した「流しソーメン」。高卒で入社した若い男性スタッフの発案でした。「周りも巻き込んでやってみたら」と背中を押したところ、紆余曲折はありましたが、結果的に腕の立つ設備担当者を巻き込み館内で流しソーメンを実現。イベント効果でお子様連れのお客様も増えました。

-コロナ禍もあり、ホテル業界、観光産業を目指していても、周囲が反対して断念するケースも多いようです。若者たちへのメッセージをお願いします。

濱田 私もかつて両親に「こんなに夜遅く帰宅する仕事は辞めて」と反対されました。実家住まいでしたがお金は貯まらず、大学の同期と飲めば「ワーキングプアだよ」と愚痴っていました。そういう業界を良しとしてきた、あるいは美談にしてきた先輩方や我々には責任の一端があると思います。かつて「残業は美学だ」と言った先輩がいたし、自分も残業しない者を否定的に感じたこともあります。そこは私たちの責任として変えて行く必要があります。価値がある仕事には対価が必要だし、待遇を見直したければ「単価を上げなくてはならなくなる」の反論に答えを出していかねばなりません。

 多くの者がホテルの仕事を大変だ、この環境を何とかしたいと思いながらも、10回に1回ぐらい、お客様やチームメンバーに救われて辞めることや変えること思い止まってしまう。そんな「いいひと」が多いんです。だってホテル業界は「いいひと」を採用していますから。でもそれではいけない。だからホテル業界の労働環境は変えて行きたい、変えて行かねばならないと感じています。

-ありがとうございました。