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【弁護士に聞く】4月1日施行の「成人年齢の引き下げ」が観光産業に与える影響

 毎度のことながらお題は考えるのが面倒なので、編集部からいただいた案に唯々諾々と従っている。今回も考えもせずに承った直後に、大昔からコラムを書いている、というか、書かせていただいている老舗業界誌の編集部からも同様のお題が届いた。

 法律関連のコラムとなると法改正があれば飛びつくということで、驚きはしないものの、さて困った。書くことがない。法務省に言わせれば、「成年年齢の見直しは,明治9年の太政官布告以来,約140年ぶりであり,18歳,19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに,その積極的な社会参加を促し,社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられます」(同省ホームページ)というぐらいの国の方針の大転換らしいが、法律的には単に18歳になっていれば、高校3年生の旅行申込も宿泊申込も親の同意のあることをチェックするまでもなく、安心して受付けられてハッピーというだけのことだ。これで終わりでは紙幅が大幅に余り、多額の原稿料もいただけないので、この問題にからめて、これまで思ってきたことを書き連ねたい。真面目で暇のない読者には、是非老舗業界誌(2月28日号)のコラムの方を参照されたい。

観光業界の受け身的姿勢の脱却を

 まずは、お題に合わせて「観光産業に与える影響」だが法律的には何もない。むしろ受け身ではなく、「観光産業が社会に与えられる影響」を検討すべきかと思う。私は古くは旅行業界と、新しくは宿泊業界と深くお付き合いをしてきた。両業界に共通するのは実に真面目過ぎるという点である。こう書くと、大手旅行会社の加盟する団体の会長が経営する旅行会社が雇用調整助成金を不正請求していたではないかと揶揄されそうだが、あれは詐欺罪にもなる事件で全く異質の話だ。旅行業務及び宿泊業務への取組みにあたって、多くの会社は実に真面目にいつも法規制を念頭に置いているということを言いたい。そのこと自体はいいことだが新しい取引に向けての柔軟性に欠けているように思えてならない。

 本誌でも、「『旅』はしたいが『旅行』はしたくない?」といった投稿があった。今の若い人は「特に行先も宿も決めずに出かけ、その現場でSNSみながらやることや泊まるところを決める」といった「旅」はしたいが、「旅行会社の出番があまり無さそうな「旅」ばかり」という。若い人の意識分析のようだが、何ということはない、小田実の「なんでも見てやろう」(講談社文庫)やダイヤモンドビッグ社が1979年に創刊した「地球の歩き方」的発想のいわば老成版である。底流には「旅」であれ「旅行」であれ、どこかに行きたいという欲求は今も脈々と流れていることを示している。投稿子はこれを枕に「オッサンこそ変わろう」と呼びかけているが、むしろそうした若者に観光業界の作る「旅行」の面白さとお手軽さを教えて、「若者こそ変えよう」という方策を考えるべきだ。世界を放浪しつくしたHIS創業者の澤田さんが若い人のために格安航空券販売を思いついたように、、、格安航空券は、当時の航空運賃ルールの明白な違反で、規制当局には「存在しない商品」である。

 今回の民法改正で新たに成人扱いをされるのは高校3年生から大学2年生までの間で、受験戦争に参戦している一部高3生を除けば、アルバイトに精を出して手元資金の一番リッチな層である。この層を狙わない手はない(消費者庁のホームページを見れば、新成人を狙った悪徳商法の警戒ぶりがわかる)。

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