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SAFと航空会社の憂鬱

  • 2022年2月7日
  • 出典:OAG
本記事は、航空関連のデータサービスを提供するOAGのウェブサイトに掲載された記事を、トラベルビジョン編集部が翻訳・編集したものです。原文はこちら(原文掲載日は2022年1月26日)。

 今週、ジェット燃料の価格が過去5年間で最高値となり、本稿執筆時点で1バレルあたり約103ドルとなった。これは1年前に比べて70%増であり、航空業界にとって新たな課題となっている。

航空会社の大きなコストである燃料費

 燃料費は航空会社の主要なコスト要素であり、営業費用の20%から30%を占めることも少なくない。デルタ航空の2021年第4四半期の決算では、燃料費とそれに関連する税金は営業費用の17%、エールフランスの2021年上半期の決算では、燃料費は営業費用の27%となっている。この規模で燃料費が上昇すると、航空会社は他のコストを削減するか運賃を引き上げる必要があるが、現在の経営環境ではどちらも容易ではない。

 2020年後半から原油の消費量が生産量を上回り、価格は高止まりしているが、2022年には生産量が増え需要が鈍化し、状況は逆転すると見られている。しかし、それでも2019年や2020年よりも高い、2018年と同程度の水準にとどまる可能性がある。2018年には航空業界は利益を上げていたので、この価格でも問題はなかったが、時代は大きく変わっている。

サステナブルな航空燃料は安いのか?

 さらに厳しいことに、航空会社には今年から、持続可能な航空燃料(SAF)の使用目標が課される。IATAによると、世界のSAFの生産量は年間約1億リットルで、これは年間で消費される航空燃料の0.1%に過ぎない。しかし、多くの航空会社が、この数字を2030年までに10%に引き上げるという実に野心的な目標を掲げている。

 残念ながらSAFは、生産量が少ない上にコストも高い。IATAでは、SAFのコストは化石燃料の2倍から4倍と推定しているが、エールフランス-KLMの最近の発表では、従来の4倍から8倍近くのコスト差が出る可能性があるという。

 IATAやそのほかの機関は、SAFの生産を支援するよう各国政府に求めているが、あくまで経済刺激策の形をとっている。フランスでは今年1月1日より、フランス内で給油を行う航空会社は、燃料構成に占めるSAFの割合を1%以上とすることを法律で定め、別の道を歩み始めている。2025年に2%、2030年に5%とする計画で、2025年までに2%、2030年までに少なくとも5%のSAF利用を義務付けるEUの「Fitfor55」提案に沿ったものだ。

SAFサーチャージの導入

 エールフランスは、SAF利用によるコスト増を補うため、SAFサーチャージの導入を決めた。現時点では徴収は任意だが、飛行時間や搭乗クラスに応じて、1ユーロから12ユーロが航空券に加算されることになる。

 航空会社はこれまでも、原油価格が急騰すると、その衝撃を和らげるために燃油サーチャージを利用してきた。今回も同様だろう。航空運賃を紐解いていくと他にも疑問の残る要素は多いが、わずかな値上げの効果はある。

 ITA Airfare Searchのデータで2月中旬にニューヨークを発着するエールフランス便の運賃を見ると、基本運賃にいかに多くの手数料やチャージが適用されているかがわかる。

 この例では往復運賃は571.57ユーロだが、基本運賃は201.5ユーロだ。ここに米国当局の6つの手数料、税金、施設使用料、フランス当局の4つの手数料、そして2つの「航空会社が課すサーチャージ」が課される。「YR」は保険料と保安料で今回は228ユーロ、「YQ」は燃油サーチャージで26ユーロ。つまりSAFサーチャージがなくても、航空会社が課すサーチャージは運賃の44%に相当する。

出典:ITA Airfare Search

環境保護のための値上げ

 エールフランスがこの発表するのに、今は悪くない時期だと言える。航空会社の供給量と運賃、需要の関係はかつてないほど不透明で、少額の値上げでは恐らく大きな違いは生まれない。現時点では任意とはいえ、新しいサーチャージは乗客に課される数多くのサーチャージの1つに過ぎず、旅行者は運賃全体だけを見るだろう。このタイミングでのSAFサーチャージの導入は、燃料コストの一部を回収する仕組みとして有効かもしれない。そして、政府がSAF生産の強化に時間がかかるようであれば、これだけ疲弊した業界がいかにして持続可能な目標を達成するのか、考えなければならないだろう。

 フランス国民がこの任意のサーチャージを支払うかどうかは、また別の問題だが。