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リアルの旅行の代替ではないオンラインツアーで地方創生を支える-グローカルプロジェクト代表 河崎靖伸氏

コロナ禍は地域観光を盛り上げるチャンス
地域に入り込むオンラインツアーで関係人口を増やす

 福岡を拠点に「オンラインツアーたびくる」を運営するグローカルプロジェクトは、これまで観光に関するマーケティングサービスを中心に手掛けてきたが、コロナ禍を受け、昨夏からオンラインツアーの販売に乗り出した。旅行会社も競って商品を企画するなか、なぜ今オンライツアーなのか。代表取締役の河崎靖伸氏(崎はたつざき)に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

河崎氏

-はじめに事業の概要とご自身のご紹介をお願いいたします。

河崎靖伸氏(以下敬称略) グローカルプロジェクトは、観光に関する企画コンサルティング、プロモーション、誘客に関わる営業代行などをトータルで提供する会社です。コロナ前までは、主として地方創生に関わる観光づくりとそれに伴う海外から地方への誘客を手掛けており、旅行会社さんに商品を渡す前までの部分を担っていました。顧客は9割が行政絡みの団体です。

 私は以前広告会社にいたのですが、大手旅行会社に移り、20年ほどインバウンドに関わりました。観光づくりというものはなかなか短期間で結果が出るものではありませんが、サラリーマンの立場ではどうしても目の前の売上ありきになってしまいます。そこで落ち着いてどっぷりと観光づくりに取り組みたいと考え、独立を決めました。はじめは沖縄を中心に活動し、その後元々のフィールドである九州にも事業を拡げました。この2、3年は沖縄にも競合が増えたため、九州にシフトしています。

 ここ10年ほどは国内観光客よりもインバウンドを主に事業を行ってきました。コロナの影響でインバウンドがゼロになり、どうにかしなければと立ち上げたのがオンラインツアーの「たびくる」です。昨年5月頃から検討を始め、8月から販売を開始。現在までに約30本のツアーを実施し、参加者は1000名を超えました。

-「たびくる」と他社のオンライツアーとの最大の違いは何でしょうか。

河崎 我々は元々旅行会社ではないので、コロナで人が動けない代替でオンラインツアーをやろう、という考えではありませんでした。地方に関わる仕事のなかで、地域の皆さんがせっかくやる気を起こしているのに、コロナでトーンダウンしてしまうのはもったいないと感じたのが始まりです。

 そもそも地方では何万人もの観光客を呼び込みたいわけではないので、それとは異なる視点で、モノの販売とコトの販売の両方を兼ね備えられたらと考えました。他社さんと違うのは、私たちのツアーに出ていただくのが、地元の生産者の方やボランティアガイドの方が多いという点です。行政にもバックアップしていただきながら、ふるさと納税のような形に近づけていこうという狙いです。

 リアルに訪れることができるときは、人はわざわざ良く知らないような村には行かないんですよね(笑)。今だからこそ、関係人口が増やせるという利点があると思っています。観光にはあまり重きを置かず、もっと奥深く、オンラインだから知ってもらえることを大切にしています。それが次回リアルでその地や人を訪ねてもらうきっかけになってくれたらいいですよね。

-コロナがなければ恐らく旅行先には選ばれなかっただろう地域を取り上げるわけですね。

河崎 日本は国を挙げて観光を盛り上げていこうとしていますが、やはり地方にはキャパシティの問題があります。民宿が1軒程度しかないような場所でいくら観光をやりましょうと言っても、結局隣町などに宿泊することになり、通りすがりに見るだけになってしまう。だから違う形で関係人口を増やしていく必要があります。以前は物産でそれをやろうとしていたわけですが、無名の地域の物産がそんなに売れるわけもありません。ですがコロナ禍になり、ある意味チャンスを迎えている地域もあるのではないかと思っています。

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