itt TOKYO2024
itt TOKYO2024

地元に貢献できる体験プログラムを造成-「城西館」宿泊営業部部長 小笠原宜嗣氏

回復を見せる宿泊売上
旅行会社とも積極的な情報交流を

-宴会や婚礼などバンケット需要はいかがですか。

小笠原 地元企業の宴会需要や婚礼需要は戻っていません。例年なら5、6月は企業の総会や懇親会の需要が多いのですが、今年はほぼゼロ。企業がらみの需要は会議くらいです。婚礼もほとんどありません。婚礼の参加者数は多ければ300人、400人規模もありましたから痛手は大きいです。土産物や館内飲食等の売り上げも伸びず、1泊2食の宿泊プランの宿泊客が主体で附帯収入も見込めません。

-コロナ禍前の売り上げ構成は、宿泊、宴会、物販など、どのような比率だったのですか。

小笠原 売り上げを支えてきたのは宿泊、宴会、婚礼、物販の4本柱です。総売り上げは20億円程度で、宿泊売り上げは全体の約3割、7億円ほど。宿泊がよくても全体としては苦しいのが実態です。宴会や婚礼は回復が遅れ、宿泊と物販で稼いでいくしかありません。

-物販で期待できる売れ筋商品はあるのですか。

小笠原 城西館×ビバ沢渡×高知商業高等学校合同開発プロジェクト「グローカルバウム」というバウムクーヘンが人気です。ほかにも不老長寿の豆として知られる高知県大豊町特産の銀不老豆(インゲン豆の一種)を使った銀不老ロールケーキ、銀不老大福、銀不老かりんとうが良く売れており、オリジナル商品の商品開発には力を入れています。

 グローカルバウムや銀不老大福は「JAL国内線ファーストクラス機内食」で提供されたこともあり、売店で露出してアピールしています。

-体験型の宿泊オプションも積極的に開発していますが、これはコロナ禍以前からの取り組みですか。

小笠原 コロナ禍以前からオリジナル体験型プログラムを「とさ恋ツアー"城西館がおすすめする高知が10倍楽しくなる旅"」として開発し宿泊客に提供しています。2009年に第3種旅行業を取得。3年後に2種を取得して県下全域を対象にオプションプログラムを展開しています。高知観光は定番コースに偏りがちでグループの幹事さんなどに「何か新しいものはない?」と尋ねられることが多かったのが、オリジナル体験の提案を始めたきっかけです。ただ国内外への販路拡大は難しく、提案が相手に届き販売を継続させていくのは簡単ではありません。何とかオリジナル体験を通じて高知の魅力を全国の皆さんに知っていただきたいと思います。

 高知県は47都道府県の中で旅行者が最後に訪れる県だと評されることがあります。四国の瀬戸内側に比べて遠いイメージがありますが、来れば魅力が分かるはずです。オリジナル体験プログラムには片手間で対応するのではなく、素材探しから企画まで専属の担当者を置いて進めるのが理想ですが私が1人で対応。不十分な体制ですが単に商品を作って送客するだけでは駄目。受け入れ側と協力して商品内容を磨き、継続していくのが大切だと考えています。次につながる商品、地元に貢献できる商品を作っていくことの重要さは、当社の社長も常に強調している点です。域外客の消費が地元に落ちて潤う、いわゆる“外貨”獲得をいかに実現するかが重要なわけです。

 それが結果的に城西館の業績につながります。お客様が増えて当館の単価が上がるとビジネスホテルへ流れる需要も増えるでしょう。しかし大人数の夕食に応える施設はビジネスホテルにない。城西館の宴会場を夕食に使ってもらってもいい。そんな風に考えています。

次ページ >>> 旅行会社とは積極的な連携を