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需要回復に向け、旅行への不安を払拭するサービスを
-日本航空 レベニューマネジメント推進部 畝川直之氏

  • 2021年5月10日

移動に新たな付加価値
組織改正で旅行会社との連携強化も

 長引くコロナ禍で苦境に立たされている航空業界。社員の異業種への出向も話題になっている。国際の往来再開時期も不透明ななか、日本航空(JAL)では、国際線利用者をサポートする「JALコロナカバー」や特別価格でPCR検査サービスを受けられる「JAL国内線PCR検査サービス」など、安全・安心な移動の実現に向けて取り組みを行っている。ポストコロナを見据え、これまで以上に旅行会社との連携を強めていきたいというレベニューマネジメント推進部 欧州・リゾート路線グループ長の畝川直之氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

畝川氏
-コロナによる最初の緊急事態宣言から1年余りが経ちましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

畝川直之氏(以下敬称略) やりたいことが実行できないもどかしさにやきもきしながらも、お客さまやビジネスをともにしている業界の皆さまの声にこれまで以上に意識を向けることができた1年だったと思います。

 実務面では在宅勤務が浸透しました。社内、社外ともに、リアルでない環境でどのようにコミュニケーションを取るのか、試行錯誤を重ねながらそれぞれのやり方を探った1年でもありました。私自身も現在出社しているのは週2日から3日程度です。国内の感染状況や部署にもよりますが、平均では約3割出社となっています。

-需要回復に向け、国内線、国際線それぞれで取り組まれている施策についてお聞かせください。

畝川 感染状況が落ち着かない環境下ではありますが 、最初に動き始めるのは国内需要だと思いますので、お客さまの「旅に出たい」というタイミングを逃さずに露出展開をしていけるよう、旅行会社の皆さまと連携を取りながら進めていきたいと考えています。国内に火が点かなければければその先の国際の観光再開には届きません。まだまだ国際については厳しい面もありますが、必ずその時は来るので、今のうちにしっかりと準備をしています。

JALコロナカバーの概要(2021年4月30日現在)

 私たちがその一つとして国際線で行っているのが、「JALコロナカバー」です。コロナ禍で、移動においてもいかにリスクを減らすかという意識が高まっていますが、特に海外は情報が少なく、日本以上に衛生環境が心配だと思います。JALコロナカバーでは、万が一新型コロナウイルス感染症に罹患したときに一連の費用をカバーするだけでなく、現地での手続きや病院などについて24時間日本語でサポートする体制を構築しました。海外では、たとえ風邪であっても、よほど頻繁に訪れている国でなければどこの病院に行けばいいのか分からないと思いますので、お客さまの旅行への不安を払拭できるようなサービスを目指しました。

 また国内線では、ウェブでの航空券の購入後、提携しているにしたんクリニックPCR検査サービスを特別価格で受けられる「JAL国内線PCR検査サービス」を提供しています。お客さまご自身だけでなく訪問先の方にも安心していただくため、税込み2,000円または2,500マイルと気軽に受けられる安価な設定にしています。航空券とPCR検査を別々に手配する煩わしさをなくしたいという狙いもあります。地域の活性化には人の流動が不可欠で、地域間の移動において安全・安心は絶対に必要なキーワードです。PCR検査は今後の地域活性化にも欠かせないものだと考えています。

 これらの取り組みに加え、空港での非接触自動チェックインや抗菌化対応などが評価され、世界最高水準の賞をアジア初ダブル受賞しました。また、4月2日にはホノルル線、4月5日にはシンガポール線において、デジタル証明書の実証実験も行いました。安全・安心でスムーズな渡航を目指し、デジタル証明書アプリの早期実用化に向けた取り組みも加速しています。

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