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【地方観光地に聞く】有名観光地を目指さない-静岡県掛川市

(左)松浦氏 (右)山田氏

 第3弾となる「地方観光地に聞く」。今回は観光事業に携わりながら「有名観光地になりたいわけではない」という静岡県のかけがわ粟ケ岳山麓農泊推進協議会に、活動とコロナの影響に関して伺った

-まず掛川市について教えて下さい

山田幸一氏(以下敬称略) 掛川は、静岡県の西部にある人口十万人ほどの市です。新幹線の駅は止まりますが、正直なところ田舎ですし、これまでも観光地として特別な開発を推し進めてきたわけではありません。そもそも、我々も有名観光地になりたいとは思っていないんです。

-観光事業をされているのに「有名観光地になりたいわけではない」ですか?

松浦成夫氏 はい、観光はあくまで地元を活性化させるための一つの手段だと思っています。そもそも私のほうは、観光業界の人間じゃないんですよ。地元の森をずっと整えていました。20年かけて、森を今の資源として使えるところまで整えたあとに、これからどうするのだろうと思ったんです。自然は大切ですか? と聞けばほとんどの人が大切ですと答えますが、そのために何かはなかなかしてもらえません。大事だと知識があっても実感がないのだと思います。実際に恩恵を受けないと保全は進まない。そこで、観光と結びつけました。

山田 自然から採れる山の恵みももちろんですが、四季の移り変わりを感じられる自然の森を実際に歩き、体験するというのはそれだけで観光資源になります。特に家族で お子様を連れて来られることが多いですね。例えば「森のようちえん」として未就学児のお子さんを連れて森の中で活動する催しをしているのですが、やはり幼少期に自然に触れさせるのはいいと非常に人気が高いです。こういった活動で観光資源として活用し、価値をしめしていくことが、地域の自然を守っていくことに繋がります。もちろん、他に観光資源がないわけではありません。掛川城や花鳥園などが有名ですが、他にも1300年近い歴史がありパワースポットとして一部で知られる阿波々神社もありますし、当地の茶草場農法は世界農業遺産にも認定されており、一面に広がる茶畑の風景やそこで取れるお茶など、無名なスポットはたくさんあります。