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クルーズ専門旅行会社、コロナ禍中も営業継続でチャンスを掴む―ビュート代表取締役 村田洋一氏

-今後、海外クルーズの旅はどのように変わっていくと思われますか

村田 中国からの需要の高まりを受け、これまで海外に行かなければ乗船できなかったラグジュアリー船やブティック船が日本にも就航するようになる。加えて、東アジアでのCOVID-19の抑え込みは世界的にも注目されており、高級船が欧米を避けてアジアを訪れる傾向は今後さらに強まるだろう。日本発着でも1名50万円以上の高額商品が増えてくるのではないか。

-旅行の販売はオンライン化が進んでいますが、クルーズについてはいかがでしょうか
オフィス内の応接ブース

村田 船会社による直販は既に始まっているが、影響は少ないと考えている。クルーズ販売には細やかなサポートが必要不可欠だ。航空券の手配では、マイレージと座席の位置、所要時間、価格などが主なチェックポイントだが、クルーズの場合、食事の場所からベッドの配置の仕方、ショーの開催時間まで、確認事項が多岐に渡り、オンラインで完結することは難しい。「左舷側ならこんな景色が見られますよ」といった話ができることも専門旅行会社の強みだ。

 以前、アメリカのエクスペディアに、クルーズの販売代理店になる話を持ちかけたことがあった。しかし彼らでも、ことクルーズに関しては、人の手を介さない手配はわずか10%にとどまり、残りは実店舗を置いて対応しているという。この経験からも、オンライン販売の比率は今後も大きく増えることはないと考えている。

-最後に観光産業の方々へメッセージをお願いいたします

村田 どうやって商品を売るか、どうやってお客様にリーチするかを考え直す時期が来ている。物販の世界ではプラットフォームに載っていれば商品は売れるが、旅行に関してはそれがない。しかし、既存の販売ルートにとらわれず、トライアンドエラーを繰り返せば、新しいルートは開けるだろう。

 現段階で来夏の海外旅行を販売している旅行会社は少ないが、クルーズの予約状況を見れば、旅行の潜在ニーズは大きいはずだ。我々はお客様のマインドを考えすぎるあまり、真のマインドに気付けていないのではないか。旅行は周囲に知らせずに申し込むことができる。視点を変えて需要を掘り起こしていくことが必要だと思う。

インタビューを終えて
今回はクルーズ専門会社「ビュート」の村田さんにお話を伺いました。コロナ禍にあっても揺るがなかった「クルーズ」への強い思い、会社存続の為にトラックに乗る選択(それも日中は会社で仕事をした後に…)、エラーを前提としたあくなきトライ等々。「意志あるところに道は拓ける」起業家はかくあるべきと言う手本です。
村田さんは将来自分の「船」を持ちたいと言う目標をお持ちです。数年後に客船オーナーとして再度インタビューに登場して頂けることを楽しみにしています。