インタビュー:ジャパングレイス取締役の山本隆氏

ピースボートの世界一周クルーズで多様な需要に対応
短期間クルーズで需要創出、他社への卸売検討も

ツアーで工夫をしているところは

ピースボート「地球一周の船旅」のパンフレット 山本 リピーターに対しては、日ごろからの関係の構築に加え、航路を検討する際、新しい寄港地やデスティネーションを入れ込むようにしている。エジプトやチュニジアなど、残念ながらリスクが高くて訪問できないエリアが増えている。こうした中で、祭りや自然現象などのテーマや行き先で新しい変化をつけている。

 今年12月発の第90回クルーズには、リオのカーニバルを組み込んだ。来年8月発の第92回では、アイスランドを訪問しオーロラ鑑賞をおこなう。こうした新しいデスティネーションの開発は重要だ。

 また、船内の多様なイベントもピースボートのクルーズの特徴の1つ。我々が「水先案内人」と呼んでいる講師が、船内で社会情勢や行き先の歴史、文化、環境問題などを講義している。これまでジャーナリストの池上彰さんや、中東を専門にしている国際学者の高橋和夫さんなどが乗船した。もちろん、普通のショーも実施する。

 我々のクルーズで1番多いのはお客様が自分で企画し、参加者を募る自主企画だ。例えば絵手紙や麻雀、社交ダンスなど、お客様自身が講師になって、仲間を集めている。北海道出身者、27歳限定など、出身地や年齢を限定して募集し、交流会を開催する、という内容の企画もある。

 このほか、主催者サイドの企画としては語学教室が好評だ。無料の講座もあるが、集中的に英語を学びたい人のための少人数制の有料講座もある。また、「洋上大運動会」のような大きいイベントでは、老若男女が入り混じってチームをつくり、世代間の交流も生まれている。お客様の年齢層の広さはピースボートのクルーズの特徴で、他社のクルーズとは雰囲気が異なる。船内企画や寄港地でのプログラムなどを含めて、お客様はアクティブに色々参加されている。


貴社の集客はどのようにおこなっているのですか

山本 居酒屋のトイレなどに貼られているポスターが有名だと思うが、新聞や雑誌、インターネット広告、ソーシャルメディアなども活用している。口コミやお客様からのご紹介もある。他社との違いはポスターくらいだろう。

 ポスターは15年くらい前から開始した。当初は規模も今ほど大きくなく、資金的にもなかなか厳しいなかで色々な広報の手段があると考えた。また、集客効果に加え、ピースボートの活動を紹介できる。ピースボートのクルーズは旅行的な側面もあるが、国際交流、ボランティア活動という側面もある。

 ポスターの掲出は全国の店舗が対象。ピースボートのボランティアスタッフが1軒ごとに活動内容を説明し、掲出してもらっている。ポスターを掲出した枚数に応じてクルーズ料金を割り引くシステムをとっており、他社にはなかなか真似できない方法だろう。現在、数万枚単位のポスターが全国で貼られている。

 また、世界一周の合間に年20回程度、横浜や名古屋、神戸、広島、博多などの日本の各港で船内見学会を実施している。全国各地での説明会は週に15本程度開催している。世界一周クルーズは、乗船経験者でないと説明が難しい部分がある。船内見学会や説明会では船内の生活から船酔いまで、かなり細かい部分まで質問が出る。我々のクルーズの場合、申し込みから乗船までは1年、長いと1年半というお客様もいる。電話や説明会などの場を通じてさまざまな質問に回答し、お客様と関係を作りながら、乗船へと誘導している。

 世界一周クルーズの説明をおこなうことが難しいため、ピースボートのクルーズは今まで基本的にジャパングレイスでしか売ってこなかった。しかし、旅行会社で代理販売をしたほうが良いという意見もあり、検討を進めている。

 また、近年ではシニア層を含めお客様がインターネットを利用することが増えてきている。そういう状況を踏まえると、インターネットでの予約手続きなど、お客様の利便性を考えて変えていく必要がある。我々だけでツアーを扱うのが正解かというのは、今後の課題だ。インターネット系の旅行会社でツアーを案内し、お客様のサポートはこちらで担当する方法もある。今後は何らかの形で卸売を広げていければと考えている。興味のある旅行会社がいれば、話し合いをしていきたい。

 このほか、中国での販売もおこなっていきたい。中国人の海外旅行は爆発的に増えており、マーケットとして魅力がある。ビザの問題などいろいろな課題はあるが、すでに何回か中国のお客様に乗船いただいている。その割合をもう少し広げていきたい。