震災で見えたポテンシャル、地方に需要分散を-WTTCより

▽需要の地方分散が課題、「着地型」や「LCC」などテコに

 もう一つの震災後の明るい兆しとして、サミット日本組織委員会副委員長の大塚陸毅氏は基調講演の中で、震災後に観光の重要性が以前よりも広く認識されていると指摘。また、旅行者が被災地を訪れることはその土地で暮らす人々に希望をもたらすとし、東北への訪問を訴えた。

 パネルディスカッションでは、東北を含む地方への需要分散化が課題の一つとして議論。JLの大西賢氏は、2016年の訪日外客数1800万人という国の目標に基づいた調査結果を用い、「リピート率をあげるという観点からも一極集中している状況を解決しなければいけない」と強調した。

 香港の旅行会社であるEGLツアーズのエンサン・ユエン氏は、「地方には素晴らしい観光素材がある」と認める。しかし、現在も香港から地方へのツアーを造成しているものの、高速道路料金などコストが高くなることがネックだと言及している。

 JTBの田川博己氏は、国内旅行、訪日旅行ともに大都市への一極集中から地方への分散は進みつつあるとしつつ、地方の魅力はまだ未発掘の部分が多いと分析。その上で、JTBが進めるDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)事業は「地方の魅力を掘り起し、磨き上げて情報発信する」ものであり、JTBだけでなく旅行業界が同様に着地型の取り組みをしていくことが、更なる分散につながるとの考えを示した。

 このほか、JLの大西氏は今後取り組むべき課題として、沖縄で中国人観光客向けに数次ビザが発給されているところだが、今後もさらなるビザ緩和や交通利便の向上が必要だと指摘。2014年に予定される首都圏空港の発着枠拡大やLCCの就航は利便性の向上や選択肢の増加に繋がり、需要の拡大に寄与するとの考えだ。