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震災で見えたポテンシャル、地方に需要分散を-WTTCより

 4月16日から19日にかけて開催された第12回世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)グローバルサミットで、東京会場のセッション1は「日本の今、そして未来」がテーマ。国土交通副大臣の奥田建氏らが講演した後、パネルディスカッションではジェイティービー(JTB)代表取締役社長の田川博己氏、日本航空(JL)代表取締役会長の大西賢氏らが登壇し、震災後の観光業界を取り巻く環境や今後進むべき道、課題などについて議論した。

モデレーター:
円城寺かおり氏/CNBC東京支局チーフ

基調講演:
奥田健氏/国土交通副大臣
大塚陸毅氏/第12回WTTCグローバルサミット日本組織委員会副委員長

パネルディスカッション:
田川博己氏/JTB代表取締役社長
大西賢氏/日本航空代表取締役会長
エンサン・ユエン氏/EGLツアーズマネージングディレクター
ジェスパー・コール氏/JPモルガン日本調査部長
アーサー・デ・ハースト氏/ジョーンズラングサールホテルズ会長
伊達美和子氏/森トラスト専務取締役


▽震災によって見直された日本

 東日本大震災が日本全体に与えた打撃は触れるまでもなく甚大だ。観光についていえば、例えばインバウンドでは、訪日外客数が2010年に27%増の861万人と大きく伸びた勢いを背景として1100万人の目標を設定していたが、震災が発生した3月は50%減、4月は63%減となり、通年でも28%減の622万人まで落ち込んでしまった。

 セッション1では、こうした打撃は前提としつつ、明るい兆しも報告された。まず、日本経済全体の話として、世界における日本の産業の重要性が再認識される機会にもなったという。

 例えば、震災直後、日本で製造されている部品の生産がストップしたことで各国での自動車製造の動きが停止。iPhoneの部品は52%が日本製で、日本企業のみが作ることができるという。こうした事例から、JPモルガンのジェスパー・コール氏は「日本の知的財産は大きい。日本には簡単な成長はないが強力な成長はある」と指摘する。

 コール氏はまた、不動産市場が「投資をするのに適したタイミング」であるとも語り、ホテル投資関連のサービスを提供するジョーンズラングサールホテルズのアーサー・デ・ハースト氏もこれに同意。

 ハースト氏は、日本のROI(投資収益率)が高いとし、海外から日本のホテルへの投資も戻りつつあると説明。その上で、「日本には素晴らしい観光素材があり、インフラや施設、サービスレベルも一流」であるため、日本政府が計画通りに観光政策を実行すれば確実に投資家も戻ると語った。

 ハースト氏のこの発言は、国土交通副大臣の奥田健氏の基調講演を踏まえたもので、奥田氏は日本政府が観光を日本の成長戦略における重点分野と位置づけていることを説明している。

 なお、海外からホテルなどへの投資において懸念されそうなのが震災リスクだが、森トラストの伊達美和子氏は、日本の建築技術の安全性をアピール。森トラストでは2年前、仙台に大型ビルを建設していたが、今回の1.5倍の強さの地震にも対応できるようにしていたという。