LCCの急拡大とその効果、日本版LCCの可能性も

  • 2011年10月21日

▽LCCの与える影響-「市場拡大」

ピーチ・アビエーション代表取締役社長の井上慎一氏

 運賃の値下がりによる効果としては、より広い顧客層が旅行の機会を手にし、結果として市場が拡大する。先ほどのシンガポール/クアラルンプール線の例では、旅行者の数が34%増加した。また、FSCが就航しなかったような2地点間の路線が開設されることもあるといい、総論としてLCCの進出は消費者と地域経済に利益をもたらすという。

 このほか、“新規需要の開拓”もLCCの得意とするところ。鷲巣氏が示すデータによると、あるドイツのLCCが2004年に運んだ旅客のうち、FSCから奪った旅客は全体の37%に留まり、新規の需要は59%に達するという。このうち、車や鉄道などからの取り込みは12%のみで、42%はそのLCCが飛んでいなければ旅行をしていなかった層という(5%は“その他”)。JQでも、日本路線の旅客のうち「10人に1人は初めて飛行機に乗る人」(ブキャナン氏)となっている。

セントラルフロリダ大学ホスピタリティ経営学部副学部長の原忠之氏

 さらに、セントラルフロリダ大学の原忠之氏も、「観光地にお客様が来る最大のカギ、逆にボトルネックと言ってもよいが、それは飛行機だ」とし、「LCCだろうとFSCだろうと、日本国籍だろうと外航だろうと関係ない」と断言した。原氏はインバウンドの場合、「外国の方が日本に来ると、経済的には輸出と同じ効果がある」とし、LCCの登場が地域経済の活性化につながるとの見方を示した。

※次回は「日本版LCCの可能性と課題」