アクセスランキング、1位は全日空B787、「安・近・長」もランクイン

  • 2011年7月9日

[総評] 今週は、初飛来した全日空(NH)のボーイングB787型機についての記事が1位になりました。岡山と広島のいずれかが定期便での初就航地になるそうですが、「ドリームライナー」と呼ばれる同型機は国際線での活躍も見込まれています。今年度中に欧州か米国東海岸に就航する計画とのことですが、5位に入ったANAセールスのインタビュー中、同社代表取締役社長の稲岡研士氏は「(就航地が)8割方決まっている」と話されました。詳細は教えていただけませんでしたが、B787型機は中型機としては航続距離が長く燃費も良いという特徴を持ちますから、大型機を満杯にするほどの需要が見込めなくてもB787型機であれば飛べる、そんなデスティネーションが選ばれると予想されています。

 ただ、あくまで中型機であり、座席数はボーイングのウェブサイトによると210席から290席程度です。旅行会社にとっては、提供される座席数が多くないため、どこまで需要の取り込みにつながるかは不透明です。その意味では、シンガポール航空(SQ)などが導入しているエアバスA380型機と比較すると、旅行会社としては“付き合いにくい”飛行機となる可能性もあります。座席供給量については稲岡氏も課題として指摘され、ANAセールスとしては商品の付加価値を高めることで、量ではなく質で利益を上げていく方針を示されました。

 また、今週は夏の旅行需要に関する記事も3本ランクインしました。テーマが一緒なので3位にまとめていますが、“安・近・長”という新たなトレンドは興味深く感じます。“長”は節電や休暇の長期化が理由と思われますが、“長”であるにもかかわらず“安・近”が人気ということは、日本人にとっては長い休みが取れるか取れないかは大した問題ではなく、結局のところ価格がすべて、とも読み取れるためです。

 数本の記事のみで考察することに大きな意味はないかもしれませんが、デスティネーション選択の際に費用が最重視されるとすれば、長距離のデスティネーションを売る際にはなぜそのデスティネーションなのか、いかに費用に見合った効果があるかを説明しなければなりません。ラジカルに考えれば、売れる時に売れるところを売ればいい、という主張も成り立ちますが、数が出るところは競争が激しくなって価格が下がり、さらにいえば放っておいても売れるわけですから、旅行会社のパイは遅かれ早かれ小さくなってしまうでしょう。

 この仮定に立つと、高騰している燃油サーチャージ額に対する“効果”をどう説明するのかという根本的な疑問はさておき、“そこで何を得られるのか”をお伝えするという、旅行会社にとってある意味で根源的な役割が求められていることになります。例え燃油サーチャージが高騰していても、現地滞在の期間が長ければ日割りの負担は少なくなりますし、消費者が長く休みを取れるタイミングであればこそ長距離デスティネーションを売ってこそ旅行会社であるとも考えられます。

 木曜日に開催されたアメリカ旅行委員会(JVUC)と近畿日本ツーリスト(KNT)の交流会で、KNT取締役兼執行役員・海外旅行部長の權田昌一氏は、米国本土を販売するための知識や経験が不足していると話され、研修の実施、セミナーや勉強会、FAMツアーへの積極参加といった対策を進めていることを紹介されました(リンク)。また、稲岡氏も付加価値の向上に向けて、知識や経験の蓄積を目的とした人事異動スパンの長期化にも意欲を示されています。

 こうした取り組みの結果にせよ何にせよ、「○○だったら負けない、負けたくない!」といった自信や意欲を持つ社員、言い換えればスペシャリストが増えることが、旅行会社が旅行会社として成長を続けるための基礎となることに疑いの余地はありません。○○はデスティネーションやSITの“SI(Special Interest)”、あるいは団体営業など、何でも良いはずです。いつか、他業界のように“カリスマ店頭スタッフ”“カリスマ団体旅行営業マン”が注目、認知され、そのプロフェッショナリズムが正当な評価を得るようになってほしいと願っています。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2011年7月第2週:7月4日0時~7月8日18時)
第1位
全日空、B787初便は岡山か広島 -伊東社長、ビジネスチャンス拡大に期待(11/07/04)

第2位
リッツ、日本で新たに3ホテルと開業契約へ-マリオットのミッション来日(11/07/05)

第3位
夏の旅行需要、海外・国内ともに09年上回る-JTB調査(11/07/04)
夏の海外旅行予約、間際化の傾向強く-「安・近・長」でアジアが好調(11/07/04)
HISとANAセ、夏の海外はアジアが牽引、長めの滞在も-クラツーは欧米が好調(11/07/06)

第4位
デルタ航空、羽田/デトロイト線を12年4月まで一時運休へ-AAもDOTへ要望(11/07/08)

第5位
ANAセ稲岡社長、スター各社やピーチの商品化に意欲、訪日強化も(11/07/06)

第6位
スカイキング、中部/サイパン間でプログラムチャーター運航へ-週5便で(11/07/06)

第7位
シンガポール航空、A330型機を15機追加投入-2013年以降に納入予定(11/07/04)

第8位
トルコ航空、成田、関空/イスタンブール線をデイリーへ-12年夏スケから(11/07/07)

第9位
明確すぎる目的が需要を生む、若者の行動意識しアプローチを-観光庁の研究会(11/07/07)

第10位
デルタ航空、燃油サーチャージ値上げ、往復5.8万円に(11/07/05)