台南に「八田與一記念公園」がオープン、修学旅行などに活用の可能性

  • 2011年5月11日
(台南発 特派:高岸洋行) 日台親睦を象徴する施設「八田與一記念公園」が5月8日、台南市郊外にオープンした。同園は日本統治時代の台湾で嘉南平野の利水事業に貢献した日本人土木技師、八田與一氏の功績を讃えるための施設。八田氏は灌漑用「烏山頭ダム」(建設当時に貯水量世界第3位)や用水路「嘉南大シュウ(※)」の建設を指揮。台湾では現在でも「嘉南大シュウの父」として尊敬を集め、毎年5月8日の命日には墓前祭が催されている。2009年の同祭に出席した馬英九総統の指示により、記念公園の建設が始まった。

 5月8日の八田與一記念公園開園式には、馬総統をはじめ、閣僚、台南市長らが出席。日本からも八田氏の出身地である石川県選出の森喜朗元首相、日華議員懇談会の藤井孝男参議院議員ら25名以上の国会議員や、金沢市長の山野之義氏など33名が参加した。

 馬総統は「かつて大部分が不毛の地であった嘉南平野が今では台湾の穀倉地帯に変貌したのは、八田氏の献身があったからこそ。日本植民地時代を美化はしないが、日本が残してくれたインフラを軽く見るべきではない」と挨拶。その上で、「徳は徳として、台湾に貢献してくれた人物に感謝するのは当然だ。日台が未来志向のもとで関係を発展させていくことに期待する」と述べた。

 1億2000万元(約3億3700万円)を投じた同園は、5.1ヘクタールの敷地内に当時の八田氏や部下たちの日本式家屋の宿舎が4棟再現されているほか、「八田技師記念館」がある。同館には八田技師を紹介した記事や書籍が展示されており、業績を紹介するドキュメンタリーフィルムを鑑賞することもできる。

 八田與一記念公園は、白河の蓮の花や泥温泉で知られる関子嶺などとともに、西拉雅国家風景区における主要観光素材として観光発展にもつながるものとして期待されている。また、日本の旅行業界にとっては、海外修学旅行の目的地や各種団体旅行の素材として利用できる可能性がある。

※シュウは土ヘンに川